2014年9月30日 第327回定例会 一般質問

<質問項目>
1.こどもの安全を守るための防犯カメラの設置強化について
2.防災・減災における自助共助を促す取組について
 (1)豪雨災害時の自主避難や予防的避難を促す取組について
 (2)地域コミュニティの防災力強化について
 (3)災害情報のオープンデータ化の推進について
3.認知症を見守る社会の構築について
4.障害者雇用の推進について

1.こどもの安全を守るための防犯カメラの設置強化について

【質問:こしだ】
はじめに、こどもの安全を守るための防犯カメラ設置強化についてお尋ねします。
地元の神戸市長田区で発生した小学1年生の女児行方不明事件は、死体遺棄という痛ましい最悪の結果となってしまいました。被害者となった生田美玲さんのご冥福を心からお祈りするとともに、ご家族の方々にお悔やみ申し上げます。また、警察や地元住民、関係各所の方々の必死の捜索の努力に感謝するとともに、一日も早く真相究明されることを念願いたします。
今回の事件においても、コンビニエンスストアに設置された防犯カメラの映像が有力な手掛かりとなり、結果的には被害者の後をつけていた容疑者も映っていたと報道されています。今や防犯カメラの映像は犯罪捜査における必須のツールであるとともに、犯罪の抑止にもつながる非常に有益な効果が期待されています。全国で頻発しているこどもをターゲットにした犯罪の発生を防ぐためにも、こどもの安全を守る観点で、通学路や公園をはじめとした様々な場所に防犯カメラが設置されることが必要です。
県では、防犯カメラ設置補助事業として、地域安全まちづくり活動の防犯設備面の支援策の位置づけとして、まちづくり防犯グループ等の地域団体が行う防犯カメラ設置に係る経費について1カ所8万円、200カ所について経費を助成しています。また、市町においても10市4町に取組が広がっているところですが、全県下ではまだまだ少な過ぎるというのが実感であります。
大阪府の箕面市では、市単独ですべての小学校の通学路に防犯カメラを設置するとしており、1小学校区50台規模の総数750台、予算額は1億5千万円であり、このような取り組みと比べてもまだまだ踏み込んだ取組みを行う余地があると考えます。
また、まちづくり防犯グループの助成申請の視点は地域防犯であり、こどもの見守りにつながる視点も当然あると思いますが、基本は申請者の自主性に委ねられている設置場所について、学校や保護者とも連携して、通学路の安全確保の役割を明確にした助成枠に対して予算配分をしていくことも必要ではないでしょうか。
神戸市は今回の事件を受け補正予算を編成して防犯カメラの設置補助を増やすことを検討すると発表しています。今回と同じような悲劇を2度と繰り返さないためにも、是非とも防犯カメラ設置の助成予算を増額するとともに、有効な設置場所のアドバイスやプライバシー情報の管理、犯罪抑止につながるよう「防犯カメラ監視中」の表示を大きく目立つように表示するなどの防犯カメラの運営面のサポートも含め、防犯カメラ設置補助事業を強化する必要があると考えますが、ご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
公明党・県民会議議員団の越田浩矢議員のご質問にお答えいたします。
まず、防犯カメラの設置強化についてのお尋ねがありました。
近年、地域における住民同士のつながりが希薄化し、地域社会が伝統的に持っていた犯罪抑止機能が低下していると言われています。犯罪の機会を与えない、すきのない地域づくりのためには、地域の安全は地域で守るといった意識のもと、あいさつ運動などによる地域の連帯感の醸成や、地域が一体となった見守り活動、防犯パトロールなどの取り組みが不可欠です。挨拶を取り交わしている地域には空き巣は入らないとよく言われています。
防犯カメラの設置補助事業は、このようなソフト面での地域安全まちづくり活動をハード面から補完し、地域防犯力の総合的な向上をめざして実施しております。平成25年度までに723ヵ所、今年度は加えて200ヵ所の補助を予定しています。設置場所の選定に当たっては、地域の犯罪情勢や設置の必要性、緊急性、見守り活動やパトロール活動の状況などを総合的に評価して行っております。通学路や公園などの設置が進んでいると承知しています。
今後は、ご指摘のように、子供の安全確保等の観点も配慮した設置に努めていきたいと考えます。今回の事件でも防犯カメラが犯人検挙に大きな効果があったように、防犯カメラは犯罪の抑止や解決に重要な役割を果たすものと考えられます。抑止効果をより高めるために、カメラが設置されている旨の表示の明確化を徹底することも重要です。心がけてまいります。
設置につきましては、県の制度に併せてかさ上げの補助を市町村独自にしていただくことはもとより、市町における単独制度の創設も働きかけるなど、市町と一体となって進めてまいります。県といたしましても、既に約400の設置希望がある申請状況等を踏まえまして、防犯カメラの設置強化にも取り組んでまいります。

2.防災・減災における自助共助を促す取組について

【質問:越田】
2項目目は、防災・減災における自助、共助を促す取組について3点お伺いします。

(1)豪雨災害時の自主避難や予防的避難を促す取組について

まずはじめに、この夏全国各地で発生した豪雨災害に関して、避難にフォーカスして伺います。
地球温暖化や環境破壊の影響からか、この夏は従来にはない局地的かつ短時間に記録的な豪雨が発生し、本県の丹波市をはじめ全国各地で甚大な被害が発生しました。特に広島市での土砂災害は、74人もの命が奪われ、この時の行政の避難勧告の発令が土石流による大きな被害がでた1時間後になったことから、避難勧告、指示の遅れの問題が大きくクローズアップされています。しかしながら、昨今の土砂災害をもたらす集中豪雨は台風の接近に伴うものではなく、前線によるもので予測することが非常に困難で、実際の現象が先に起こり、警報等の発表が状況の後追いになることが少なくありません。当然、今後とも行政側が予測精度を高めて正確な情報を如何にいち早く伝えるかという課題に取り組むことは重要ですが、この予測困難である点を十分に踏まえる必要があります。更に、住民の避難に対する意識の低さの問題もあります。過去の災害における避難率は極めて低く、8月の台風第11号では、兵庫県内9市1町で延べ34,213人に避難勧告や避難指示が発令されましたが、実際に避難したのは468人と避難率はわずか1.4%であります。また2010年の南米チリ巨大地震では最大128センチの津波が観測されていますが、避難指示・勧告がでた26都道県の対象者のうち避難した人は3.8%、2012年7月の九州北部豪雨でも佐賀県内の避難率は0.8%であります。
危険が迫りつつある状況を自分のこととしてとらえられない「正常化の偏見」の心理を打ち破り、自らの命を守る視点と避難勧告などの行政からの指示に頼るのではない自主性を持って行動してもらう必要があります。
そこで参考となる事例として、熊本県は平成25年度から夜間に大雨が予想される時には明るいうちに避難を促す予防的避難という取組を行っています。夜間に1時間雨量80ミリ以上を予測した場合などに市町村が昼間から避難所を開設するというもので、それに対して県が避難所開設費用の半分を負担しています。今年7月の台風8号の進路に熊本県全域が収まっていた時には、45市町村の約3500世帯、約5000人が予防的避難をしています。
また豊岡市では、ペットボトルを利用した簡易雨量計を、土砂災害警戒区域のうち特に危険度が高い地域に配布し、自主避難の目安となる累積雨量120ミリの部分にある印に達した場合に自主避難するという取組を行っています。
今後についても、豪雨災害等は頻発する恐れがあり、特に災害が発生する恐れのある地域に住む県民は、避難勧告だけを頼りにするのではなく主体的に災害に向かい合う必要があります。そのための支援として、既に県では、ホームページでCGハザードマップなどを提供し、県民自らが危険性を知ることができる取組を進めており、それらの周知に努めていただきたいと思います。
県民の自主避難や予防的避難を促すため、市町の避難情報発令態勢を支援するなどして、自ら判断して避難するかどうかを決めて行動できるような支援を幅広く行っていくべきと考えますが、ご所見をお伺いします。

【回答:杉本防災監】
防災・減災における自助共助を促す取り組みについてのうち、豪雨災害時の自主避難や予防的避難を促す取り組みについてお答えを申し上げます。
防災・減災対策に万全を期したといたしましても、それを超える災害が絶対ないとはいえません。一方で、避難を促されても、行動を起こす判断は自分自身であります。そういった意味で、自分の命は自分で守る行動が求められます。つまり、早目の避難を心がけ、災害が発生するまでに避難を完了するということが望まれるということです。
このため、県では災害が予測される場合には、ひょうご防災ネットにより、気象台や市町の防災情報に注意し、早目に避難するよう呼びかけております。
また、平常時から県民だよりひょうごやラジオ番組等、さまざまな媒体を利用いたしまして、CGハザードマップはじめとするさまざまな防災情報の周知にも努めているところでございます。
また、市町に対しましては、避難に関するガイドラインに加えまして、事前対応をスケジュール化するタイムラインの考え方を示しまして、夜間や大雨の中での避難の危険性と早目の避難行動を住民に呼びかけていただくよう、助言をしているところです。
さらに、24時間監視即応体制のもと、気象警報発表時にはその後の見通し等を気象台から聴取いたしまして、市町に注意を促しておりますし、河川水位や土砂災害危険度情報の変化等があった際にも、市町との情報共有を図っているところでございます。いずれにいたしましても、避難の判断に当たりましては、空振りを恐れないということが重要でございます。災害は起こらなかったけれども避難しておいてよかったと、そう思えるような風潮が形成されていきますように、今後とも県民への啓発と市町との連携に努めてまいります。

【再質問:越田】
防災の取り組みについて、避難について再質問させていただきたいと思います。やはり避難率が低いという現実があり、そういう中で先ほど空振りを恐れないと、何もなくてよかったという風潮を作っていくことが大事だというご答弁もいただきましたが、なかなか実現するには難しいだろうなと思っています。やはりどうしても人間、正常化の偏見もあるということではありますが、ある程度自動化するということ、こうなったら避難するというような決めごとがあると避難がしやすかったりするのかと思いますし、単に心理的な部分を何とかしようというのはなかなか難しい面があると思います。豊岡市がやっているような一定の雨量に達したら逃げましょうという、そういった取り決めが決まっていると逃げれるのではないかと思うのですが、この点について、県として取り組まれないのかというところを踏まえ、何かご所見あればお伺いしたいと思います。

【答弁:杉本防災監】
避難について改めてご質問をいただきました。豊岡市の実例もご紹介いただいております。 確かに、災害、特に避難ということにつきましては、その地域でいろんな災害経験がございますし、地域ごとにいろんな災害の顔が異なるといいますか、そういう状況がございます。それに応じて、やはりその対応を決めていくということが必要だと我々も思っております。そういったことにつきましては、先ほどご紹介いたしました避難に関するガイドラインの中で、しっかりと地域ごとの災害経験を確認をするとか、あるいは、その地域の弱点、こういったところを調べるとか、そういったことで市町の方にお願いをしているところでございまして、そういったことに応じて、避難が素早くできるような体制を組んでいけるように、今後また市町と十分協議を進めさせていただきたいと考えております。

(2)地域コミュニティの防災力強化について

【質問:こしだ】
では次に、地域コミュニティにおける防災力の強化についてお伺いいたします。
地震、津波、土砂災害、洪水など様々な災害に備え、防災・減災を進めるには地域の防災力を高め、自助、共助の力を充実させることがキーになります。先ほど質問した避難のあり方も含め、日常的な防災訓練をはじめ、避難経路・危険箇所の確認や、避難行動要支援者の支援者確保、避難所の運営など、地域で担うべき役割や対応力に期待されている事柄が数多くあります。
核家族化が進んだ現代社会においては、地域コミュニティが希薄化しており、高齢化と相まってお互いに支えあう共助が機能しにくいところが多く存在します。災害列島といわれる日本においては、いつどこで災害が起こるかわからず、行政にのみ頼ることの限界が昨今の災害であらわになっているところです。だからこそ、地域の防災力を強化し、自助、共助の機能が発揮されるような地域づくりへの支援や仕掛けが必要になると考えます。
本年4月より改正災害対策基本法に「地区防災計画」制度が盛り込まれ、自治会や町内会単位で地元の実情に応じた行動指針である「地区防災計画」を作成し、市町村に対して提案でき「地域防災計画」にも反映できるようになりました。
まだ制度が始まったばかりで、兵庫県内で作成した地区防災計画はないと聞いていますが、内閣府はこの地区防災計画を作成する目的(基本方針)は、地域防災力を高めて、地域コミュニティを維持・活性化することにあるとしています。地域コミュニティのメンバーが協力して防災活動体制を構築し、自助・共助・公助の役割分担を意識しつつ、平常時に地域コミュニティを維持・活性化させるための活動、地域で大切なことや災害時にその大切なことを妨げる原因等について整理し、「災害時に、誰が、何を、どれだけ、どのようにすべきか」等について地区防災計画に規定することになっています。
自主防災組織や消防団などの担い手不足や高齢化等の課題が浮き彫りになる中で、もう一度地域コミュニティの活性化の観点で、その核に防災を据えた取組を促していくことが重要であり、ひいては防災以外の地域包括ケアや高齢者見守りといったコミュニティ機能向上にもつながるはずであります。
昨年の一般質問において地域における防災の取組みメニューや実績を見える化し、その実績レベルに応じた認定制度等の導入してはどうかと提案させていただきました。取組みメニューに防災リーダーの活用や避難行動要支援者の支援者指定、ひょうご防災ネットのメール登録や家屋の耐震補強など地域で何に取組めばよいかを明確化し、その成果を評価するというようなことも含め、災害が頻発する状況において、自助・共助を促す仕掛けとしての防災の取組に関して当局のご所見をお伺いします。

【回答:井戸知事】
防災・減災における自助、共助を促す取り組みとして、地域コミュニティの防災力強化のお尋ねがありました。
阪神・淡路大震災では、倒壊家屋に閉じ込められた人の8割が家族や近隣住民によって救助されたと言われています。共助の取り組みが強い地域ほど人的被害が少ないという貴重な教訓となりました。
多発する風水害や発生が懸念される南海トラフなどに備えるために、地域の防災力の強化が急がれます。地域防災力を高めるには、まず、実践的な活動に向けての機運を醸成する必要があります。次に、活動をリードする人材を育成しなければなりません。第3に、訓練などの実践的活動を繰り返すこと、これらが肝要です。
これらを推進するために、本年3月に自主防災組織向けの手引書「防災訓練~はじめの一歩」を作成しました。その中で、例えば、災害時要援護者への支援など、地域における防災の取り組みを網羅し、計画づくりや先進事例なども紹介しております。
このほか、県として現在、震災20年を契機とした減災キャンペーンを行っていますが、これらを通じて機運の醸成を図っています。
人づくりとしましては、ひょうご防災リーダー講座の開催や、防災士会による地域でのワークショップ・訓練等の展開により、人材育成と地域と人材のマッチングに取り組んでいます。さらに、実践的訓練としましては、消防団と自主防災組織の連携による訓練の実施や、ひょうご安全の日推進事業による助成を通じ、実践的な訓練が繰り返し行われるよう、支援してまいります。
なお、ご指摘の認定制度や成果の評価に関しましては、災害経験や想定される災害の態様、人口や建物の集積度合いなど、地域ごとに異なりますし、地域の防災活動にどの程度の実効性があるかなど、やはり慎重な検討が必要であると考えています。
一方、訓練等に当たっては、地域ごとにテーマを明確にして取り組む必要があると私どもも考えられます。今後、市町とも協議していきたいと思っています。今後とも市町との連携を強めながら、これらの事業を進めてまいります。

(3)災害情報のオープンデータ化の推進について

【質問:こしだ】
次にオープンデータ化の推進に関してお尋ねします。
オープンデータとは、ニーズの高い行政・公共データを人手を掛けずに二次利用を可能とする取組であり、国においても積極的・戦略的に推進しています。要は、自治体ごとに様々な様式やフォーマットで作成されている行政データのフォーマットを統一して、営利・非営利に関わりなくデータを活用してもらおうとするものです。
このオープンデータ化による効果としては、行政の透明性・信頼性の向上、国民参加・官民協働の推進、経済の活性化・行政の効率化が三位一体で進むことが期待されています。
本年2月定例議会において前田議員がオープンデータの県としての取組について質問していますが、これに対して、県としては県独自のデータカタログの構築をまず行い、公開可能な公共データの選別と整備に取り組み、平成27年度の公開を目指すとともに、その利活用の促進について、今年度は大学や専門学校、企業と連携した公共データを活用したアプリケーションのモデル開発、あるいはオープンデータ活用のための人材の育成、シンポジウムの開催などを実施する旨答弁しています。
そこでお伺いしますが、来年度の公開に向けた取組や検討の進捗状況とともに、来年度以降の公開データ拡大や運営体制の充実等についてどのようなロードマップで取り組もうとされているのでしょうか。また、昨今の土砂災害や南海トラフ巨大地震等への防災・減災の備えに対する意識が高まる中、防災・減災に資するデータ、例えば既に横浜市で取り組んでいるような地域防災拠点、帰宅困難者一時滞在施設、津波避難施設、応急給水拠点をはじめ、それ以外にも福祉避難所、AED設置箇所、消火栓の位置等は非常にニーズが高く、幅広く活用されることが期待でき、先行してオープンデータ化する必要があると考えます。データの種類によっては県だけで収集・管理することが困難で、市町と連携しながら県が主導して推し進めていく必要があります。更に災害の広域化や人の流動が関西圏内で大きいことを考えると関西広域連合としても取り組むべきであると考えます。こうした防災・減災に資する情報のオープンデータは、アプリ等の開発により多様な形で情報提供されることで、人の生命を守るとともに、防災・減災に向けた自助、共助の取組を支援することにつながります。是非ともスピード感を持って県として取り組んでいただきたいと考えますが、ご所見をお伺いします。

【答弁:藤原政策部長】
災害情報のオープンデータ化の推進についてお答えいたします。
県におきましては、オープンデータ化に向けまして、現在、提供データの検討を進めておりまして、年内にはデータの選定基準であるとか、活用ルールなど、オープンデータ推進の基本方針を策定いたしまして、来年の4月にはポータルサイトを構築して、データを一元的に提供してまいりたいというふうに考えております。
基本方針には、一つには、社会的ニーズが高く、コンピューターで判読しやすいデータ形式の統計情報や地理情報などから提供を始めること。二つには、来年度以降、民間の利活用状況も踏まえながら、提供データについては順次拡大を図ってくこと、三つには、活用に当たっては営利、非営利を問わないこと、四つには、自己責任で活用することなどを盛り込んでいくことを検討しているところである。
県民の関心が高い防災情報ももちろんオープンデータの対象となります。例えば、防災情報の場合であれば、地図上に危険箇所や避難所、公共施設などのオープンデータに加えまして、家族や要援護者の位置情報を表示するアプリケーションが製作されるなど、県民の防災力の向上につながるような有効利用が見込まれることから、積極的にデータを提供してまいります。
また、防災の最前線を担います市町のデータも一元的に利用可能な仕組みとしていきたいというふうに考えております。
さらに、災害の広域化等に対応していくために、提供データの共通化など、関西の府県市との連携についても今後、検討してまいります。公共データが民間で広く利活用されることで、行政の透明性向上、県民の参画と協働、経済活性化等に効果が期待できることから、本県におきましては、知事を本部長として全部局で構成するひょうごICT戦略推進本部をこの4月に立ち上げましたが、この本部におきまして、オープンデータ化に積極的に取り組んでいきたいと考えておりますので、よろしくご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

3.認知症を見守る社会の構築について

【質問:こしだ】
次に認知症を見守る社会の構築についてお伺いします。
認知症で身元が分からないまま施設に保護されている高齢者が相次いで確認されています。厚生労働省が今年6月に行った実態調査によると、身元不明で保護されている認知症の人が今年の5月末現在で10都府県26市区村に合計35人いることが判明しています。全国で昨年1年間に、認知症やその疑いで徘徊するなどして警察に行方不明届が出された件数は10,322件、そのうち98%は1週間以内に所在がわかっていますが、388人は亡くなった状態で見つかっています。兵庫県では、昨年警察に届けのあった件数が1,308件、そのうち5件が行方不明で未だ発見されていない状況です。
厚労省の推計では65歳以上の認知症患者は400万人を超えるとされ、今後も更に大幅な増加が想定されます。そのため認知症患者が徘徊し、行方不明や事故に巻き込まれるケースが今まで以上に数多く発生することになり、早期に発見・保護するための仕組みである「徘徊・見守りSOSネットワーク事業」を各市町で着実に取組んでいくとともに、また厚労省が検討している警察や自治体の枠を超えて身元を確認できるシステムの構築が待たれます。
「徘徊見守りSOSネットワーク」は、高齢者が行方不明になった時に、警察だけでなく、地域のタクシー会社や郵便局、ガソリンスタンド、コンビニ、銀行、宅配業者、町内会、老人クラブ、介護サービス事業者など、日頃地域で活動している企業や住民団体などが捜索に協力して、すみやかに行方不明者を発見保護するしくみです。兵庫県内では既にこのネットワークを構築しているのは10市町、今後構築予定が9市町で、未構築市町が22市町もあります。本来であれば特に都市部地域は電車などで広域に移動することが想定されることから、近隣市町村で連携したネットワークを構築することが望ましいとされていますが、県下では、阪神地域で尼崎市、芦屋市、伊丹市などにおいても未構築であります。
県としては未構築市町に対する指導や広域連携に向けた支援を積極的に行うとともに、更には大阪府等の近隣府県との連携構築にも取り組むべきであります。また、認知症高齢者が不明となった時に、本人情報をあらかじめ登録し、IDが刻印されたシリコンラバー製のブレスレットを装着するといったツール等もあるので、そういったものを併せて活用することも有効ではないでしょうか。
「徘徊見守りSOSネットワーク」の実現には、地域住民が常日頃からの見守りによって認知症への理解を深めておくことが、行方不明者の早期発見や予防にもつながります。これまで認知症サポーターの養成により、平成26年5月末現在で約19万人がサポーターに認定されていますが、認知症高齢者が非常に身近な存在となってきている状況においては、誰もが認知症に対する知識を習得し、認知症の人をやさしく見守る社会を目指すことが必要であり、より多くの認知症サポーター養成を目指すべきであると考えます。
神奈川県では、eラーニングシステムの講座を導入し、誰でもいつでも認知症について学べる機会をネットで提供しています。認知症サポーターの養成においては、養成講座の開催は市町が行い、県の役割は講座の講師であるキャラバンメイトを養成することですが、理解促進のためにeラーニングであれば、いつでもどこでも自分のペースで学ぶことが可能であり、多くの人に学習してもらうためにも是非兵庫県でも実施すべきであると考えます。
以上、「徘徊見守りSOSネットワーク」の充実や事前登録による識別ツールの導入、理解促進のためのeラーニングシステム導入によって、認知症を見守る社会の構築を進める必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

【答弁:太田健康福祉部長】
私からは、認知症を見守る社会の構築についてお答えを申し上げます。
認知症の方の大幅な増加が見込まれます中、県は本人や家族の方が安心して生活ができる地域の見守り体制の構築を推進をいたしております。
まず、徘徊の恐れのある人を事前に市町等に登録し、住民等が日常的に見守りますとともに、行方不明になられた場合、早期発見、保護する徘徊または見守りSOSネットワークにつきましては、警察とも連携をした研修や、徘徊模擬訓練の実施によりまして、各市町にこのネットワークの強化を働きかけております。
また、徘徊者の識別としてのお話のございましたブレスレットでございますとか、例えば、光るシューズステッカー等、市町の先進的な取り組みにつきましては、県の研修などを通じて普及を図っております。
今後は、ネットワークを未構築の市町に実施を促しますとともに、市町の構築状況を踏まえつつ、市町間、近隣府県との広域連携にも取り組んでまいりたいと考えております。
なお、先月からは、県のホームページに身元不明者の特徴、写真を掲載し、厚生労働省のホームページとリンクして全国に身元確認を行う取り組みを始めております。
地域の見守り体制の構築には、地域住民による認知症への理解を更に促進することも重要でございます。認知症予防教室、あるいは、県内11の認知症疾患医療センターが行う住民講座などで啓発に努めますほか、県のホームページによる認知症チェックシートの普及など、インターネットの活用も図ってまいります。
ご指摘の神奈川のeラーニングシステムの導入も含め、先進事例の調査を行い、積極的に取り入れてまいります。今後も市町、警察、関係機関・団体と連携し、県民一人ひとりが認知症への理解を深めるよう、なお一層の啓発に取り組む所存でございます。よろしくお願い申し上げます。

4.障害者雇用の推進について

【質問:こしだ】
最後に障害者雇用の推進に関してお伺いします。
県では、障害者雇用・就労対策本部を設置し、障害者が職業人として自立した生活を実現できるよう①一般就労における障害者雇用の拡大、②福祉的就労における作業スキルアップ・工賃向上等に積極的に取り組んでいます。兵庫県の障害者の雇用率は平成25年6月1日現在1.84%で全国20位、法定雇用率の2%には届いていませんが、全国平均を上回っており、取り組みの成果が表れていると言えます。
今後、2018年4月から障害者法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられ、法定雇用率の引き上げも見込まれていることから、引き続き障害者雇用の推進を強化する必要があります。
特に、障害者が自立した生活を確立するには一般就労の拡大が重要であります。障害者が一般就労を希望し職を探す場合に、各県民局単位に設置されている障害者就業・生活支援センターやハローワークで相談することになります。必要に応じて職業訓練校や障害福祉サービス就労移行支援事業で、職業訓練を受けたうえで、職場紹介、就職後の職場定着フォローをしてもらいます。また、特別支援学校においても職業教育や就職支援を行っています。障害者の状況や個人の特性が様々であり、一律的な対応はできないと思いますが、就労支援のサービスや機能が非常に多様であるため、相談する側にとって少し迷う部分もあり、ワンストップの窓口機能を明確にして周知する必要があるようにも感じます。学校を中退した障害者の方から各窓口をたらい回しにされたというお話を伺ったこともあります。
また、一般就労拡大には就職先の企業開拓が一番のキーとなると考えます。法定雇用率の未達成企業のうち障害者を1人も雇用していない企業が占める割合が59.4%となっており、特に中小企業においては障害者の雇用に対する認識の低さとともに、障害者にどのような業務を任せられるのかといったノウハウや知識がないことが要因となっていると考えられます。県は障害者雇用フェスタや障害者しごと体験などの事業によって啓発に取り組んでいますが、個別の企業ごとに、障害特性に応じてどのような業務で雇用が可能になるのか、具体的に業務内容を分析し障害者に適した業務の抽出などのコンサルやマニュアル化まで支援することが有効であると考えます。また雇用するうえでの制度的な体制や雇用後に発生する問題に対する企業側、障害者の両方に対するフォロー体制が整備されていることも雇用に対するハードルを下げることにつながります。2018年より障害者法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられますが、障害者雇用における障害種別ごとの比率は身体が70%、知的が26%であるのに対して精神障害者は4%と著しく低い状況であり、これまで以上に丁寧な企業へのフォロー体制が求められることになると考えられます。これらの業務は、各機関でそれぞれが部分的に独自に行っており、ネットワーク会議等での情報共有は行っているとのことですが、改善の余地があるのではないでしょうか。障害者の雇用が可能な企業を増やしていくことが、着実な雇用拡大につながりますので、機関ごとに実施している職場開拓の機能を連携強化するなどに取り組む必要があると考えますが当局のご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
障害者の雇用の推進についてであります。
障害者雇用を推進するためには、就職を希望する障害者への支援と、受入先となる企業への働きかけが重要です。障害者への支援としては、県下10ヵ所の障害者就業・生活支援センターが地域における雇用と福祉のネットワーク拠点として、就業相談など現場的な役割を担っています。平成25年度には延べ4万件の相談を受け、439人が就職、さらに就職後の職場定着支援も実施しています。
企業への働きかけとしては、国がハローワークに専門援助部門を設け、雇用相談や企業開拓を行っていますが、各企業における就業可能な業務の抽出等の支援も実施していると承知しています。
県では、県雇用開発協会に専任の支援員を配置し、中小企業への相談支援や、障害者雇用促進セミナー、先進企業見学会などを通じて、各企業への働きかけに努めています。
今年度は精神障害者等の雇用支援のため、具体的な雇用事例も紹介した企業に向けたガイドブックの作成などを行うことにしております。障害特性に応じた職場での受け入れ体制の整備を支援していきますとともに、引き続き、就業・生活支援センターが地域のワンストップの総合窓口であることを積極的に周知して、その機能を発揮させていきたいと考えています。
企業開拓については、兵庫労働局、ハローワーク、就業・生活支援センターやしごと体験事業の実施を担う、県社会福祉事業団等の関係機関と連携を更に強化して、障害者の職場創出を図ってまいります。
なお、私は特に、特例子会社の設置と事業協同組合による雇用の場づくりが重要と考えています。大企業には単独でふさわしい仕事を特例子会社に委ねる。中小企業ではふさわしい仕事を持ち寄って事業協同組合を作る仕組みであります。このような考え方のもとに、障害者雇用に積極的に取り組んでいきたいと決意をしております。よろしくご指導ください。

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