
「半径400mのまち」湯村温泉の魅力と観光戦略を視察
兵庫県の北西端に位置する新温泉町は、県内でも神戸から最も移動時間を要する地域です。その新温泉町にある「湯村温泉」は、春来川のほとりに湧く日本屈指の高熱温泉として知られています。

今回、産業労働常任委員会の管内調査として、湯村温泉観光協会会長で旅館「朝野家」の朝野社長から、湯村温泉の特徴や観光振興の取組についてお話を伺いました。その後は温泉街をご案内いただき、荒湯で温泉たまごを茹でて作る「たまごサンド」の調理体験もさせていただきました。
■湯村温泉の特徴
湯村温泉の最大の特徴は、源泉温度が98度と非常に高く、湧出量も豊富であることです。そのため、旅館だけでなく一般家庭にも温泉が水道のように配湯されており、料金も水道と同程度です。地域では温泉を日常生活の中で利用することが当たり前となっています。
泉質は弱アルカリ性で重曹を含み、洗濯に使えば衣類が白く仕上がり、洗顔や洗髪では毛穴の汚れを落とす効果が期待できるそうです。町内の理髪店では「温泉洗髪」ののぼり旗も掲げられており、温泉が暮らしの中に根付いていることを実感しました。
元湯である「荒湯」では、98度の高温泉が毎分470リットル湧き出しています。全国的にも珍しく一般に開放されており、観光客が温泉たまごを茹でる光景は湯村温泉ならではの風景です。地域住民も野菜などを「ゆがく」ために日常的に利用しており、生活に密着した場所となっています。
朝野会長は「半径400mのまち」というコンセプトを掲げています。人が気軽に歩いて回遊できる範囲がおよそ半径400mであり、東京ディズニーランドもシンデレラ城を中心に半径400m程度の範囲で設計されているそうです。湯村温泉も荒湯を中心に主要な施設が半径400m以内に収まっており、住民が自宅から荒湯へ野菜などをゆがきに行く文化が自然と育まれてきました。


この「荒湯での湯がき体験」は、ひょうごフィールドパビリオンのプレミアプログラムにも選定されています。これをきっかけに多くのメディアで取り上げられたことが、湯村温泉の魅力発信につながったとのお話も伺いました。
また、観光客に温泉街を歩いて楽しんでもらうため、町中にある「ハートマーク」を探す周遊イベントも実施されています。5つのハートマークを見つけてスマートフォンで撮影し、観光協会で提示するとタオルがもらえるという、ゲーム性を取り入れたユニークな取組です。

■ユニバーサルツーリズムの取組
兵庫県では、高齢者や障害者、乳幼児を同伴する方など、移動や宿泊に不安のある人でも安心して旅行できる環境づくりを進めるため、令和5年に全国で初めて「ユニバーサルツーリズム推進条例(高齢者、障害者等が円滑に旅行することができる環境の整備に関する条例)」を制定・施行しました。
この条例に基づき、湯村温泉は「ひょうごユニバーサルな観光地」に指定されています。現在はユニバーサルなお宿として3軒の旅館が認定されているほか、車椅子利用者でも足湯を楽しみやすい設備が整備されるなど、誰もが安心して滞在できる温泉街づくりが進められていました。

■観光客の誘客に向けて
アクセス面では決して有利とは言えない湯村温泉ですが、朝野会長は関西国際空港、神戸空港、鳥取空港の3空港を湯村温泉のハブ空港と捉えた誘客戦略を描いておられます。かつて運航されていた神戸からのヘリコプター定期便の復活構想や、鳥取砂丘を訪れる観光客の宿泊先として湯村温泉を選んでもらう取組など、広域的な視点で観光振興を考えておられることが印象的でした。
湯村温泉は、温泉にゆっくり浸かり、心身ともにゆったりとした時間を過ごすことができる温泉地です。地域ならではの資源や文化を磨き上げ、その「個性」を観光の魅力へとつなげる朝野会長の情熱と発想力に大きな刺激を受けました。今回の視察を通じて、地域の強みを見つめ直し、それを磨き続けることこそが観光振興の鍵であることを改めて実感しました。

<関連リンク>
湯村温泉観光協会
https://www.yumura.gr.jp/
