2016年2月1日 第330回臨時会 補正予算案に対する質疑

<質問項目>
1.保育職場環境の改善による保育人材の確保対策について
2.児童養護施設退所者等に対する自立支援について
3.介護人材の確保対策について
4.“ひょうご五国+α”を活かしたツーリズムの展開について

本会議場で質問するこしだ

1.保育職場環境の改善による保育人材の確保対策について

【質問:こしだ】
公明党・県民会議議員団を代表し、今回提案された補正予算案に対する質疑を行います。
この度提案のあった総額約435億円の補正予算案は、過日成立した国の補正予算を踏まえ、兵庫県として本格的に地域創生に取り組む事業について、早期執行を目指し、定例県議会に先立って臨時議会に議案上程されたものであります。限られた時間の中で迅速な補正予算案をとりまとめられた対応に対し、敬意を表したいと思います。
世の中が激しいスピードで変化していく中で、素早く行動するスピード感は非常に重要であります。ぜひとも今回の補正予算事業について、成立後速やかな執行を期待し、以下4項目について質疑を行います。

まず初めに、保育職場環境の改善による保育人材の確保対策についてお伺いします。
地域創生の核は、人口減少対策であり、人口の自然増、社会増をいかにして実現していくかが最重要項目のひとつであります。そのための施策は、安心して出産・子育てできる環境の整備・充実がポイントであり、働きながら子育てをする母親のためには、保育所等の待機児童ゼロを実現していく必要があります。県はこれまでも認定こども園の推進や小規模保育事業の拡充などに取り組み、保育枠の確保に取り組んできたところでありますが、特に都市部においては未だ待機児童の解消には至っておらず、施設整備の推進をしていく上で保育人材不足が大きな課題としてクローズアップされている状況であります。
県内には約4万人の潜在保育士が存在しており、今回の保育人材確保対策貸付事業費補助事業によって、潜在保育士の再就職を促し、保育人材確保に即効性のある効果を期待するものであります。しかしながら、保育士資格を有しながら保育士として就職しない最も多い理由が「賃金が希望と合わない」ことを挙げていることからすると、県内での2年間就業で返還を免除する復職潜在保育士への保育料貸付や、就職準備費用の貸付が保育人材確保策としてどこまで有効であるか疑問の残るところであります。また、賃金以外の労働条件面でも、勤務時間の長さや、保育以外の事務作業等の負担に加え、子どもを預かる責任の重さなど、職場定着に向けて解消すべき課題が従来から指摘されています。今回の保育補助者雇上支援事業では、保育士の負荷軽減につながる保育補助者の雇用の促進を目指すもので、事業者に対して雇用のインセティブを提供し、保育士免許取得を希望する意識の高い保育補助者の確保と、保育士育成の両方を進める事業でありますが、保育現場においては現状でも補助者人材の確保が困難との声も聞かれる中で、本事業の効果も未知数であります。
保育人材確保には、その前提となる保育職場環境の改善を進めることこそがより重要で、潜在保育士が保育士として就職しない理由を解消していく必要があります。そこで県として従来から取り組んできた離職防止等の既存事業に加え、今回の保育補助者雇上支援事業によっていかに相乗効果を発現しながら保育職場環境の改善を進め、保育人材の確保につなげていこうとしているのか、当局のご所見をお伺いします。

【答弁:太田健康福祉部長】
保育職場環境の改善でございますが、保育人材の確保には、保育職場の魅力の向上が不可欠でございます。これまで、一つには、保育士の給与改善として、平成26年度に平均2%、平成27年度からは平均5%の改善、二つには、施設管理者等に対する職場環境改善に向けた実践的な研修、三つには、3歳児担当保育士の配置改善あるいは保育補助者の配置支援による業務負担の軽減などに取り組んでまいりました。 このたび上程中の保育人材確保対策貸付事業費補助は、一つには、子供を保育所等に入所させた場合に支払う保育料や就職準備に必要な資金を貸し付けることにより、潜在保育士の職場復帰を促すほか、保育補助者雇上支援事業として、保育所等の補助業務に従事しながら保育士資格取得を目指す方の雇用に係る資金を貸し付けることで、意欲的な保育士の育成を促すものでございます。 このような人材確保の取組を進めますことで、現在勤務しておられる保育士の業務負担が軽減され、離職防止にも結果的につながるなど、職場環境改善に向けた相乗効果も期待いたしております。
県といたしましては、保育職場の魅力向上に向けたさまざまな取組を充実させつつ、併せて保育士・保育所支援センターなどを活用した潜在保育士等への情報発信も強化するなど、保育人材の確保に向けた取組を進めてまいります。

2.児童養護施設退所者等に対する自立支援について

【質問:越田】
次に、児童養護施設退所者等に対する自立支援についてお伺いします。
今回提案されている児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業は、児童養護施設を就職や進学で退所した者に対して、家賃や生活費を貸付け、5年の継続就業を前提に返還を免除するもので、これまで自宅同様に暮らしてきた施設を退所した後の自立を支援する事業であります。「兵庫県における児童養護施設退所者に係る実態調査報告(平成26年度)」によると、施設退所後に就職した場合、3年未満に退職する割合が全体の6割を超えていることや、進学した場合に大変だと感じていることの上位に「学業とアルバイトの両立」が57.1%、「学費等の負担」が46.4%を挙げている状況からすると、この事業によって経済的な負担軽減が図られることは、自立を強く後押しする素晴らしい支援策となります。しかし同調査で退所後に「まず困ったこと」の回答として1位が「孤立感・孤独感」(35.7%)、2位が「身近な相談相手・相談窓口」(27.3%)を挙げていることからすると、経済的な支援だけでなく、親代わりに気軽に相談ができアドバイスしてもらえる場が必要であることも明らかであります。更に、退所後の住居確保においては、契約時に必要な保証人をどうするか、敷金・礼金や生活をスタートするための家財道具等のイニシャルコストの問題をどうクリアするか、進学した場合の奨学金受給手続きに必要な保証人等の課題もあります。児童養護施設の施設長等が善意で保証人となり、負債を被らざるを得なくなるといったことも発生しているとの話も聞きます。このような点については、行政のきめ細かなサポートが更に求められる分野であると考えます。
そこで、今回の自立支援資金貸付事業について、期待する効果をどう考えているのか、また指摘したような課題について、現状認識とその解消に向けてどう取り組んでいくのか当局のご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
児童養護施設退所者等に対する自立支援についてです。
児童養護施設の入所児童や里親に委託されている児童は、施設等の退所後、約8割が就職、2割が大学等に進学しています。 児童が新たな生活を円滑に立ち上げるためには、経済的支援は極めて重要です。自立支援資金は、貸付対象が家賃相当額や生活費等であり、安定した自立生活に向け、大きな効果が発揮されると期待しています。 新生活を安定させるには、経済的支援に加えて、ご指摘の相談支援の充実なども必要です。このため、退所児童等が養護施設や里親を定期的に訪問できる機会を提供し、社会生活のよりどころとする取組も行われています。 今後、さらに県児童養護連絡協議会や兵庫県里親会とも連携しながら、退所児童等へのアフターケアも進めていきます。 就職の際の身元保証やアパート等の賃貸借契約については、連帯保証を施設長が行うことが多いのですが、この場合、県は施設長の負担軽減を図るため、賠償責任保険を補助する身元保証人確保対策事業を行っています。
退所児童等が新生活を始めるための初期費用については、施設措置費により就職支度費あるいは大学進学等自立生活支度費として、退所の際に自立に必要な準備経費の一部を支援しています。これに今回の自立支援資金貸付事業を組み合わせて活用することにより、退所児童それぞれが自立して安定した生活基盤が確保できるように期待してますし、支援してまいります。

3.介護人材の確保対策について

【質問:越田】
次に介護人材の確保対策についてお伺いします。
厚労省によると、団塊の世代の全てが後期高齢者となる2025年には、全国で約38万人の介護人材が不足することが見込まれるとし、今般政府として新たに掲げた「介護離職ゼロ」の実現に向けて、2020年の不足数20万人と介護サービス基盤整備の上乗せ前倒し整備に伴う追加人材5万人分の合計25万人の介護人材を今後着実に確保していく必要があるとしています。今回の国の補正予算では追加・緊急的に必要となる介護人材確保策として、「離職した介護人材の呼び戻し」、「新規参入促進」、「離職防止・定着促進、生産性向上」の3つについて対策を進めようとするものであります。これまでも介護報酬アップやキャリアアップの支援、イメージアップの推進等に取り組んできていますが、景気の回復による日本全体の雇用状況の改善傾向もあり、きつくて賃金の安い介護職場の人材確保はこれまで以上に厳しい環境であると言えます。そうした中で即効性のある潜在介護人材の呼び戻し策として新たに実施する再就職準備金貸付事業が、再就業を促す動機づけとしてどれだけの効果を発揮できるかは未知数であります。また介護福祉士等養成施設入学者の修学資金貸付事業については、従来の支援策を拡充し、介護福祉士等を目指す学生の増加を図るとともに、卒業後の介護現場への就労・定着を促進するために返還免除付き学費貸付を実施するもので、非常に優遇された支援を受けながら介護福祉士等を目指すことができる内容となっており、新規参入促進効果が期待されます。
そこで兵庫県における介護人材の不足の現状について伺うとともに、従来取り組んできた施策と今回の修学資金等の貸付事業により、どの程度介護人材確保に寄与すると想定し、将来の不足数解消に向けたストーリ―をどう描いているのか、当局のご所見をお伺いします。

【答弁:太田健康福祉部長】
介護人材の確保対策でございます。 県が平成27年8月に実施をいたしました調査では、平成26年度における県内の介護人材は13万6,200人と推計されます。第5期介護保険事業支援計画に定める13万600人は上回っておりますが、新規開設に必要な職員の確保に難航したり、離職者が補充できない事業所があるなど、介護現場では不足感が大きいと認識をいたしております。 県はこのため平成37年度における介護人材の必要数を約19万6,000人と見込んでおりますが、具体的な施策を講じない場合には約2万2,000人が不足すると試算しておりますことから、この解消に向け、一つには介護サービスのイメージアップ、二つには中高年層等を対象とした就職説明会の開催など、多様な人材の参入の促進、キャリアアップのための研修等の実施あるいは労働環境改善など、魅力ある職場づくりの支援、このような視点から人材確保対策を計画的に推進してまいります。
さらに、今回、創設する再就職準備金貸付事業につきましては、県福祉人材センターにおいて周知を図ることにより、今後3年間で約3,700人の再就業を見込んでおります。
介護福祉士等養成施設修学資金についても、3年間で約140人に貸し付けるということで、今後の介護サービス基盤の前倒し整備に必要な人材の確保にも対応してまいります。
また、新たな取組として、将来の介護の担い手となる高校生が介護の仕事への理解を深めるための学習プログラムの開発も行います。元気高齢者等を対象とした1日就労体験等により、介護職の参入拡大を図るほか、いわゆる離職した介護福祉士等の届出制度を活用して、再就業も支援してまいります。あるいは、介護機器の導入による介護離職防止策あるいは再雇用の雇用延長の支援策等で、介護離職ゼロに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

4.“ひょうご五国+α”を活かしたツーリズムの展開について

【質問:越田】
最後に国の地方創生加速化交付金を活用した“ひょうご五国+α”を活かしたツーリズムの展開についてお伺いします。
政府は、昨年の日本への外国人旅行客が1973万人を突破したことを受けて、2020年に2000万人という目標を3000万人に上方修正するとしています。外国人旅行客が激増したのは、円安やビザ発給要件の緩和、LCCの急速な普及などにより、特にアジアからの旅行客が増加したことによると分析されています。地域創生を進めていくうえでも、インバウンド対策を効果的に進め兵庫県に外国人旅行客を呼び込む事業の重要性はこれまで以上に増していると言えます。しかし、為替相場が原油安やテロ等の影響で世界市場が動揺していることにより、円が安全通貨として見直されつつあり、円高に振れていくトレンドが見込まれる情勢であります。今後は、たとえ日本への旅行価格が上昇したとしても、外国人観光客にとって魅力的な観光資源を外国人目線で創意工夫して県内の各地域で開拓するとともに、更に兵庫の奥深さ、素晴らしさを実感してもらいリピーター客として取り込んでいく努力を続けることが重要であります。
今回実施しようとする“ひょうご五国+α”を活かしたツーリズムの展開事業は、多様性に富む兵庫県のオリジナリティある資源を各県民局・センター単位に掘り起こす事業や、広域的な観光プロモーションの展開を図るとともに、外国人観光客を受け入れる基盤整備や情報発信の事業を実施しようとするものであります。訪日外国人旅行客の県内動向を分析する上での細かな統計データが十分取れておらず、インバウンド施策の検証や見極めがなかなか困難であることは承知していますが、今回の補正事業実施にあたり、これまで取組んできたインバウンド対策事業の効果や課題分析を踏まえ、国が掲げる2020年訪日外国人旅行客3000万人の目標に対して、兵庫県としてどのようなビジョン・戦略を描き、本事業をどう位置付け、兵庫県への外国人旅行客の増加を図っていこうとするのか、当局のご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
「ひょうご五国+α」を生かしたツーリズムの展開についてです。
訪日外国客数は3年連続で過去最高を更新し、全国で1,973万人となり、本県でも少なくとも100万人を突破する見込みです。特に、姫路城では3月末のオープン後の9ヵ月間で前年比4倍の23万5,000人、城崎温泉では2倍強の3万1,000人と、著しく伸びてます。こうした勢いを持続的に取り込み、国の目指すインバウンド3,000万人時代を先導していくことは本県でも必要です。 施策展開に当たっては、まず、外国人旅行者にアピールする地域の魅力づくり、第2に、ニーズに応じた戦略的なプロモーション、第3に、ハード・ソフトの受入基盤の整備、第4に、近隣府県など、関係団体等との効果的な連携が重要です。 地域の魅力づくりでは、県民局等によるジオパークや銀の馬車道などの地域の観光資源に磨きを掛ける事業を展開する。 二つには、戦略的なプロモーションでは、海外旅行博への出展や招聘旅行を通して、対象国のニーズに応じた観光地やルートを紹介、旅行会社と連携した魅力ある旅行プランの企画、ミシュラン・グリーンガイド英語・フランス語ウェブ版など、多言語による情報発信などを行います。 三つに、外国人旅行者受入基盤整備では、Wi-Fi整備やおもてなし研修などを進めます。 さらに、四つに、近隣府県との連携では、関西や瀬戸内海の広域観光周遊ルートの形成などを進めてまいります。 このようなマーケティング手法を取り入れた多角的な戦略も踏まえながら、本県への外国人旅行客の増加に努めてまいります。

目次