2019年12月6日 第346回定例会 代表質問

<質問項目>
1.令和2年度の予算編成の方針について
2.次期地域創生戦略と「兵庫2030年の展望」リーディングプロジェクトについて
3.地域における出産体制確保対策について
4.スマイル条例制定後の取組成果と今後の展開について
5.県内地場産業の海外展開支援の取組について
6.再生可能エネルギーの企業の導入支援について
7.子供の通行する道路の安全対策について
8.県立公園の活性化による集客拡大の取組について

1.令和2年度の予算編成の方針について

【質問:こしだ浩矢】
初めに、令和2年度の予算編成の方針についてお伺いをいたします。
我が国の経済情勢は、名目・実質GDP、企業収益のいずれも過去最高規模となっており、雇用や所得の環境が改善し、本県においても、設備投資は高水準で、雇用面でも10月の有効求人倍率は1.4倍と高水準を維持しており、賃金も前年同月を上回っています。一部に足踏みは見られるものの、緩やかな拡大が続いております。
しかしながら、先日、政府が国の本年度の税収見通しを、米中貿易摩擦の影響で企業業績の悪化のため、1兆から2兆円規模で大幅に引き下げる方針をかため、本県においても、県税収入は円高の影響による輸入の減少で地方消費税貨物割の減収や中国経済の減速の影響により法人関係税の伸び悩みから、当初予算額の確保が厳しいと見込んでおります。
このような状況を踏まえつつ、来年度予算編成の基本方針としては、行財政運営の基本方針に基づき、選択と集中を徹底し、防災・減災対策の総合的な推進による安心・安全の確保、兵庫2030年の展望及び21世紀兵庫長期ビジョンを踏まえたすこやか兵庫の実現に向けた施策の推進、県民の参画と協働による県政の推進を掲げています。
本県においても、人口減少に伴う課題が顕在化しつつあり、この4年間、地域創生戦略の推進に取り組んできたにもかかわらず、若者世代を中心とした人口の転出超過に歯止めを掛けられず、出生率の向上も伸び悩み、交流人口増の柱でもある外国人観光客数も大阪府や京都府に大きく水を開けられるなど、課題が山積しております。
来年度予算編成に当たっては、これまでの延長線上ではない、思い切った斬新な発想や取組により、転換点となるような事業展開が求められると考えます。毎年のように、選択と集中という言葉で方針が語られますが、選択と集中とは、中核となるコア事業の見極めと選択を行い、組織内の経営資源を集中的に投下することによって、経営の効率化や業績の向上を目指す経営戦略のことであります。
兵庫県は、五国の多様性があり、その多様性を大事にすることに重きを置き、全方位的な事業を展開してきた側面があると思いますが、資源の集中投下による最大の事業効果を発揮する発想で地域創生に取り組む選択と集中の言葉どおりの取組が求められていると考えます。一般事業枠の経常的経費及び政策的経費を本年度予算充当一般財源額の6%を削減し、削減額の2分の1相当額を新規事業財源として活用し、実質的には3%削減する方針を示していますが、このような枠組みで出てくる新規事業がどれほどの効果を発揮できるか、少し疑問に思うところでもあります。
そこで、地域創生戦略に取り組んできた、この4年間の課題や成果等を踏まえつつ、すこやか兵庫の実現への道筋を具体的にどう見据え、来年度の予算編成を行っていこうとされるのか、ご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
公明党県民会議議員団を代表しての越田浩矢議員のご質問にお答えいたします。
まず、令和2年度の予算編成の方針についてであります。
予算編成に当たっての基本原則は、県政として県民の希望に応える予算を作り、これを実践することにあります。そのためには、県政推進施策を絶えず見直し、新たな施策に充当していくことが不可欠となります。これを選択と集中として基本姿勢としてまいりました。
地域創生については、まず人口は自然減や社会減が続いているものの、地域創生戦略が目指す2020年の人口目標とは大きな差がないと見込んでいます。目標は、2020年546万5,000人です。現在のところ、546万8,000人でありますので、ちょっと下回るかもしれないという状況です。
一方で、まず首都圏を中心に本県への移住ニーズは確実に高まってきていると思っています。兵庫にゆかりを求める関心層も拡大しつつあるなど、成果が見られます。まだボリュームはそう多くはありません。
二つに、出生数の減少、特に若い女性の流出や県内就職率が3割を切るなど、若者世代の流出超過が拡大しています。
第3に、交流人口の確保は、外国人観光客数が大阪京都に比べて低水準にありますし、全体量でも1億5,000万の目標に対しまして1億3,900万ほどでありまして、かなり差がある状況になっています。
令和2年度の予算編成に当たっても、次期地域創生戦略における課題への対応をしっかりやっていかなければなりません。併せて、防災・減災対策など、安全・安心な兵庫の構築、産業競争力の強化など、地域の元気づくり、交流基盤の整備など、交流・還流の促進、そして2030年の展望のリーディングプロジェクトの推進など、積極的に取り組んでまいります。
一方、令和2年度の財政環境は、地方一般財源総額が平成30年度水準とされ、社会保障関係費の自然増や震災関連県債の償還等を考慮すると、引き続き厳しい状況が見込まれます。
兵庫県行財政運営方針に基づき、各会派からの申し入れも十分に踏まえながら、これまでの事業効果を検証し、選択と集中の徹底による取組の重点化を図り、新たな時代潮流に対応して、五国それぞれが持つ多彩な魅力を生かす、すこやか兵庫の実現に向けた施策を展開する予算を編成してまいります。よろしくご指導をお願いしたいと存じます。

2.次期地域創生戦略と「兵庫2030年の展望」リーディングプロジェクトについて

【質問:こしだ浩矢】
次に、次期地域創生戦略と兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトについてお伺いをいたします。
我が会派は、従来から地域創生戦略の取組を実効性あるものとするため、施策の効果を適切なアウトカム指標で評価した上で、事業効果の高い施策を見極めつつ、地域の特性に応じた斬新な取組を行うよう求めてまいりました。地域創生戦略の戦略目標の中で、人口の自然増については中長期に取り組むべきで、即効性を求めることはできませんが、人口の社会増については、もっとやりようがあったのではないかと感じております。人口の社会減の原因分析で、若者の東京への転出超過がよく語られますが、大阪への転出超過も無視することができないレベルにあります。
平成30年度で見ますと、20歳から24歳の転出超過は、東京都への転出超過が2,560人、大阪府への転出超過が2,301人と、ほぼほぼ同じようなレベルで転出超過をしております。
去る9月県会で、あしだ議員の質問に対して、知事から「現行戦略は全県目標しかなく、地域の成果が見えにくいため、地域の強みを活かしたプロジェクトを検討することも必要」との答弁がありました。
兵庫県は、関西経済圏に属し、関西の中心は大阪であります。企業数や就業人口も圧倒的に大阪が多く、インバウンドでにぎわいを増し、万博開催も決定し、都市部での再開発や鉄道の新路線計画などめじろ押しで、大阪経済は非常に活性化しつつある状況であります。この大阪に就業する人口のうち、どれだけの人に兵庫県に住んでもらえるようにするかを考え、手を打つことが人口の社会増を実現していく上で重要であります。
そして、最もその効果が出やすいエリアは、阪神間を中心とした大阪通勤圏エリアであり、知事が言われる地域の強みを活かすことができる一例になり得ると考えます。阪神地域をはじめとする大阪通勤圏エリアの居住利便性や魅力向上を図るような施策、例えば新駅の設置促進、武庫川の周辺に阪急の新駅が検討されておったり、西宮の統合病院近くへのJR新駅の設置、こういったことも進めたりしてですね、さらには待機児童を集中的に解消すること、行政や福祉のサービスレベルを近隣府県よりも向上させること等を、大胆かつスピード感を持って一気に進めるようなことが重要ではないでしょうか。
また、来年度からリーディングプロジェクトとして、兵庫2030年の展望が描く望ましい将来像をもとにした兵庫の未来を拓く先駆的な取組の展開が計画されています。2030年の展望に掲げる未来の活力の創出、暮らしの質の追求、ダイナミックな交流・還流の三つの基本方針のもと、プロジェクト項目を検討しているとのことですが、これらのリーディングプロジェクトについても、欲張り過ぎずに項目を絞り、資源を集中させて取り組む分野において大きな効果を出すことを目指すべきであり、横並びのプロジェクトではなく、優先順位を付け、めり張りの利いたものにすべきではないかと考えます。
そこで、地域の強みを活かす次期地域創生戦略や兵庫の未来を拓く先駆的なリーディングプロジェクトの展開によって、どのように人口増対策や交流人口増といった地域創生の戦略目標を達成していこうとされるのかについて、ご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
次期地域創生戦略と兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトについてです。
人口は、地域活力を示す一つの大きな指標であります。長期的な自然減は避けられないとしても、次期戦略期間内で社会減に歯止めを掛けなければならないと考えています。
このため、若年層の就職、起業促進はもとより、子を産み育てられる環境整備や交流基盤の充実といった基本的な対策を充実してまいります。
人口の定着を図るには、地域の魅力を高める必要があります。このために地域の個性や強みに着目した地域別プロジェクトの推進にも力点を置いてまいります。例えば、阪神・淡路では、大阪・関西万博の開催やIRの立地などを見据え、ベイエリアへのホテルの誘致や国際会議など、マイス機能の集積を促進していきます。併せて、海上交通網を整備し、交流から定着・還流につないでまいります。
また、丹波では都市農村交流の先進地を目指し、気軽に農業を楽しめる環境を整備し、二地域居住や移住を促進します。但馬では、リゾートや芸術を楽しみながらリモートワークを行うワーケーション、働きながら楽しむ、ICT等により海外と産地と直接結ぶ産地直結ビジネスなど、新たな働き方を推進します。こうした取組によって、望む働き方や質の高い暮らしができる兵庫を作り出していきたい、このように考えています。
一方、兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトは、最新の科学技術も活用して、中長期的に望ましい兵庫を作る狙いを持っています。どんな地域でも快適に暮らせる未来型交通システムの実証、兵庫発のイノベーションを生み出すスタートアップの集積など、ヒトやモノを呼び込む活力の源泉となるプロジェクトを五国各地域で展開していきます。
地域のポテンシャルを生かす地域創生の取組と時代の変化を捉えた先進性を持つ兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトは、まさに兵庫の未来づくりの両輪と考えています。
将来を見据えた取組を一つ一つ積み重ねていき、地域創生を実現してまいります。

【質問:こしだ浩矢】
再質問をさせていただきたいと思います。
来年度予算と地域創生について今回の2問において、選択と集中をもっとめり張りの効いた形でやっていくべきではないかという問題意識を強く持っています。それで、特に今回、阪神間の例を挙げさせていただいて、やはり大阪に勤めている方に兵庫で暮らしてもらうという視点をもっと強く持って、いろんな施策、事業を展開すべきではないかと前々から思っているところもあり、その点どうなのかなというふうにずっと思っていました。
今、知事からの説明がありました、地域の魅力を高めるというところで、大阪万博、IRもできるという見込みもある中で、ベイエリアの魅力を高めていこうという説明、構想では、ホテルを造ったりMICE機能を高めたり、海上交通を整備しようというお話をいただいたわけなんですけれども、やはり阪神間で住んでもらって大阪に、要は大阪で働いている人に大阪、京都や滋賀に住むのではなく、兵庫に住んでもらうということを実現をするために必要なことというのは、今、答弁いただいたことではないのではと思っていまして、より踏み込んだ、例えば私が質問の中にも入れていますが、新駅の設置で、例えば武庫川新駅なんか、ずっと検討されている中で進んでいないと思うんですけれども、県がイニシアチブを発揮して新駅を設置すれば、非常に大きなインパクトがあると思っています。西宮の新駅もできれば、あそこは卸売市場の跡地にタワーマンションを建てようみたいな構想もニュースとかで聞き及ぶところですが、いろんな住む人の魅力を高める施策を、県としてできることはなかなか限られているかもしれませんが、踏み込んでもっともっとやっていくことで、県の核はやはり神戸であり阪神間であると思いますので、その辺の強みをどう発揮していくのかが地域の魅力を高めていく上で非常に大事な点だと私自身は感じているのですが、その点で何か知事の思いとかお考えの中で、その阪神間の魅力を高める、大阪に勤めている人に兵庫に住んでもらうということとして何ができるというふうにお考えか、お聞きしたいと思います。

【答弁:井戸知事】
現実に、10年ほど前は大阪から兵庫への流入人口が多かったわけであります。これは、背景としては、大阪のマンション整備が遅れていて、兵庫にマンションを中心とした住宅整備が、かなりのボリュームで行われて兵庫に移り住んでくれる人が、かなりのボリュームがあった。それが今、大阪の住宅整備、タワーマンションを中心にかなり割安で整備がされてきておりまして、その関係で、ご指摘ありましたように、大阪に住む方々が増えてきているという実態にあると承知しています。
ただ、最近尼崎市の状況によりますと、尼崎の工場移転などに伴いまして、その跡地にマンション等が整備されて、若い世帯が増えてきているという実情がありますし、西宮の動向も同じような動向を示しています。
ただ、明石の場合は、明石は増えておりますけれども、そのほとんどは大阪から来ているよりは近隣の市町から集めているというような状況でございます。
したがいまして、住宅政策を住んでもらうために推進を図っていくということも一つ、人口を増やすという意味では意味があるのかもしれませんが、一方で西宮のように、小学校等の整備が追い付かなくなってバランスを欠いてしまうおそれもあるというような点も出てきますので、これからのニーズということを考えましたときに、地域地域でそのような適切な判断をしていただくということが必要ではないか。ただ、兵庫の場合にかなり土地の確保が難しくなってきておりますので、そのような意味で、どちらかといいますと、空き家を更に再活用をしていくというような点で我々としては一つの住宅対策の強化ということを図っていくべきではないか、そのように思っています。
この空き家の対策もですね、まちづくりの中で位置付ければ面的な開発にもつながりますので、そういう面的な対策の中で、ある意味で大量供給手段としても検討していける余地がある、そのように考えています。
それと、尼崎と西宮の境界の武庫川新駅につきましては、いろいろ働きかけをしておりますけれども、両市の思惑がどうしてもまだまだ一致していないという状況がありますので、県としても中に入らせてはいただいていますが、画期的な進捗を見ていない、まだ更に努力を続けさせていただきたい、このように思っています。
明石に何か車両基地を造るという構想が報道されたりしておりますが、まさか車両基地だけの整備では済まないということになりますから、そのような動き、課題は農地の利用の課題とかありますけれども、そういう動きも新しい動きとして我々も着目していかなくてはならないのではないか、そのように思っています。
ご指摘の点は、一つの大きなポテンシャルを指摘していただいたのではないか、そのように考えております。来年度予算の編成過程の中で十分検討させていただきます。

【コメント:こしだ浩矢】
今、空き家の活用というお話がございました。県の空き家対策が結構中核市、政令市を除く空き家施策が中心になっている部分もありますので、ぜひですね、やはり神戸市内とか本当にたくさんの空き家、地元でも見かけますし、そういったところも活用していただくような、活用できるような、県としての後押しもぜひお願いしたいなと思いますし、あと、今、明石の車両基地の話も出ましたけれども、大阪通勤圏エリアというのは、JRの新快速に乗れば、もう明石であろうが、極端な話、姫路でも十分通勤は可能なエリアに入ってくると思っておりますので、阪神間と申し上げましたけれども、明石、加古川、姫路といったところも十分魅力を高める中で、大阪に勤務する方に住んでいただける、選択していただける地域にもっともっとレベルアップしていけるんではないかと思っていますので、そこも踏まえて取組をしていただきたいというふうに思っています。

3.地域における出産体制確保対策について

【質問:こしだ浩矢】
3点目は、地域における出産体制確保の対策についてお伺いをいたします。
我が会派は、従来から、誰もが安心して住んでいる地域で子供を産み育てられるよう、産婦人科医及び助産師の確保や質的向上、高度専門的な周産期医療の充実が必要と主張してまいりました。来年度予算編成に対する最重点要望事項としても、先日、知事に申し入れをさせていただいたところでもありますが、産科医の減少については、民間病院では少子化に伴う分娩数の減少といった経営上の問題もありますが、1999年の医療事故の刑事事件化や、2004年の福島県立大野病院産科医逮捕事件、これは無罪判決になっておりますが、こういったことをきっかけに激減をしてきた状況がございます。
県内で見ると、丹波篠山市では出産の3割を占める兵庫医科大学ささやま医療センターが今年度末で分娩を休止する意向を示しており、市内で出産できる施設は1ヵ所のみになる見込みです。また、尼崎市では来年中に市内の分娩の3分の1を担ってきた三つの医療機関が分娩を休止するほか、北播磨では市立加西病院のほか、北播磨地域で最も年間分娩数が多い産科医療機関が来春までに分娩を休止すると聞いております。県内の分娩できる病院・診療所は、2008年に116施設だったものが、2017年には96施設まで減少しており、その後も歯止めがかからない状況が続いております。住んでいる地域で子供を産むことができない状況の広がりが深刻化しております。このままでは、出産できない地域には、若い世代が住まなくなることも懸念をされます。
去る9月県会での我が会派のあしだ議員の質問に対して、知事からは分娩手当の一部支援による産科医の処遇改善や産婦人科医等を目指す県養成医師に対する特定診療科育成コースの新設といった取組とともに、より実効的な医師偏在解消対策を進める医師確保計画の策定について答弁がありました。
県では、医師養成が進められており、中長期的には、その取組によって医師偏在が解消することに期待するところではありますが、先ほど述べた地域の状況を考えると、更なる対策を検討すべきであると考えます。
産科医の減少は、全国的な問題で、即効性のある取組は難しいということは理解しますが、誰もが安心して住んでいる地域で出産できるよう、産科医や助産師の確保、質的向上のために、県として今後どのように取り組んでいこうとしているのか、改めて当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
地域における出産体制確保についてお尋ねがありました。
近年、少子化の影響に加え、長時間勤務や訴訟リスクの高さなどから、産科医が不足し、分娩取扱施設が減少したことで、出産が困難となる市町も生じております。私のふるさとたつのも、一つもありません。産科医の確保をはじめ、産科医の負担軽減に加え、周産期医療圏ごとに近隣市町が連携して妊婦健診や分娩を行う体制の構築が更に必要になると考えています。
そのために、県養成医師の特定診療科育成コースにおける産科医の育成、分娩手当への支援や神戸大学の地域医療活性化センター等と連携した研修による産科医や助産師等の資質の向上、院内助産の設置促進等の取組を引き続き推進してまいります。
さらに、今年度末には医師確保計画を策定し、新たに産科を目指す専攻医を確保する取組や正常分娩からハイリスク分娩に対応できる実践力の高い助産師の育成を目指す研修を行ってまいります。
周産期母子医療センターと一般の産科医療機関との間でのより迅速な患者搬送についても検討を進めていきます。
これらにより、周産期医療圏単位でのネットワークを強化し、不安のない体制を整備していきたい、このように考えています。
今後とも、大学や市町、関係団体等と連携しながら、これらの取組を推進して、地域における出産体制の確保を図ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【再質問:こしだ浩矢】
再質問をさせていただきます。出産体制の確保対策ということで、産科医の養成も含め県の医師の養成は本当に計画的にやってきて、これからいよいよ供給が始まって、充足されていくんだというふうには認識していますが、特に産科医が減っている中で、追加の取組もやっていただいていますが、産科医だけではなく、診療科による偏在というのが今後もいろいろ出てくるのではないかと思っています。ですので、特に産科医は切実な状況が顕在化しているというところではありますが、例えば外科医も結構少ないんだとか麻酔科も少ないんだとかというお話を聞く中で、よりそういった診療科の偏在に対する対策をもう一歩踏み込んで取り組む必要があるのではないのかなと思いますが、その点のご所見を伺いたいと思います。
【答弁:井戸知事】
ご指摘がありましたように、産科医と外科医は、平成10年頃と現在20年後を比べましたら、絶対数で全国的に減っている、1割ぐらい減っている状況にあります。したがいまして、専門医機構が専門医の養成等のいわば司令塔をやっているわけですが、専門医機構も産科医と外科医をどういうふうに確保して、育成していくかということを力点を置かれている状況です。
先ほどもお答えしましたように、医師確保計画の策定と併せまして、現在の専攻医を目指すための特定診療科育成コースという県養成医師の特定診療科、つまり産科医なんかもそうなんでありますが、これらのコースに育成者として定めて、後押しをしていくという制度の運用を始めました。まだですね、産科では令和元年、今年で1年、来年も予定しているのが1名という本当にスタートを始めたばかりなんでありますが、この制度を更に活用して、専門医の不足対策を行っていくことが非常に現実的な対応になるのではないか、このように考えて、充実を図っていきたいと思っています。繰り返すようですが、医師確保計画を作りますので、それに基づいて養成医師、専門医の育成のめどをターゲットの数字等を設定することによって誘導をしていくということも一つの手段にさせていただければな、こう考えているわけでございます。
【コメント:こしだ浩矢】
ありがとうございます。各地域でもどうなるんだろうかという不安が非常に大きいなと感じます。各地域で各首長さんから医師確保のご意見を伺いますが、不安を解消してあげれるような計画、数字を示していくことも大事だと思いますので、ぜひその点をお願いしたいと思います。

4.スマイル条例制定後の取組成果と今後の展開について

【質問:こしだ浩矢】
次に、ひょうご・スマイル条例制定後の取組成果と今後の展開について伺います。
議員提案により制定し、昨年4月から施行されました障害者等による情報の取得及び利用並びに意思疎通の手段の確保に関する条例、いわゆるひょうご・スマイル条例ができて1年半となります。この条例が制定されたことで、兵庫県が推し進める誰もが安心して暮らし、自己決定による能動的な社会参加を目指すユニバーサル社会づくりに大きく寄与することが期待されています。聴覚障害者団体からは、手話言語条例制定を切望する声を引き続きいただいていますが、当該条例制定に当たっては、これらの趣旨を踏まえながら、多くの障害者団体からご意見をいただき、まとめ上げたところであります。
これまでから視覚に障害がある方については、点字図書館において点字図書や録音図書による情報提供、聴覚に障害者がある方については手話の普及促進により情報取得等への支援の強化が図られてきたところであります。
当該条例の着実な推進を図る上で、視覚障害者や聴覚障害者の情報取得等への支援が重要なことはもちろんですが、とりわけ目、視覚と耳、聴覚の両方に障害があり、自分で情報を得ることが相当困難な盲ろう者の情報取得等への支援強化は大きな課題ではないかとも思います。
また、盲ろう者は一人で外出することも困難です。このため、情報取得等への支援に加え、盲ろう者が社会参加をしていく上においては、生活訓練、総合相談、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣、養成などの福祉サービスの充実も重要となりますが、県のこれらの事業への予算は、まだまだ不十分ではないかとも感じております。
ひょうご・スマイル条例の趣旨に沿って、更なる取組を推進し、全国の盲ろう者福祉を兵庫県がリードすべきではないでしょうか。そこで、ひょうご・スマイル条例の制定から1年半がたった今、条例制定により、どのような取組を行い、どのような成果が出てきたのか、また、それらを踏まえた今後の展開について、当局のご所見を伺います。

【答弁:金澤副知事】
ひょうご・スマイル条例制定後の取組成果と今後の展開について、私からお答えを申し上げます。
ひょうご・スマイル条例は、ユニバーサル推進条例と併せまして、その理念を実現するための具体的な方策として昨年10月にユニバーサル社会づくり総合指針を改定して、体系を整理しながら実効的な施策を展開をしております。
中でも、視覚や聴覚に障害がある方は、情報の取得に一層の配慮が求められますことから、総合指針の情報の分野でも予算を拡充して取組を進めているところでございます。
条例制定後、初めて編成をされた今年度予算でございますが、その中では情報取得の強化に積極的に取り組んでおります。視覚障害者に対しましては、点字図書館でのオーディオブックの充実強化など、聴覚障害者につきましては未就学の聴覚障害児ができるだけ早いうちから手話を身に付けていただくための未就学の子供のための講座開設といった拡充を行ったところでございます。
ご質問にありました盲ろう重複障害ですけれども、こうした方への情報取得支援はより難しいものがございまして、特に支援者を養成するということが重要だと考えております。
兵庫県では、全国に4ヵ所しかない盲ろう者支援センターを運営いたしますNPO法人兵庫盲ろう者友の会に事業委託する形で、通訳や介助員を養成する研修におきまして、盲ろう者との主な意思疎通手段であります触手話、手を触ることによってコミュニケーションする手話、あるいは指点字の習得を強化しております。併せて、生活訓練の場において盲ろう者の方と一緒に調理や入浴を行うなどの訓練を通じて、実生活の中でのコミュニケーション力を高める、そういう措置、そういう研修を行っているところでございます。
もう一つ、盲ろう者の方が社会参加をしていくためのきっかけづくり、あるいは県民の理解促進も重要でございますので、交流イベントや学校出前講座への支援を行いますなど、これも年々予算を増額して施策の充実強化に取り組んでおります。
例えば、この盲ろう予算に関しましては、平成29年、2年前は1,130万円ほどの予算でしたけれども、今年度は1,500万円余の予算となっております。こうした兵庫県の取組は、他府県からの視察も入りますなど、全国からも注目されているのではないかと存じます。
こうした取組の結果、先ほど申し上げました盲ろう者支援センターへの相談件数、あるいは、このセンターに登録されます登録盲ろう者数、登録支援者数も増加しております。登録盲ろう者数については、昨年の4月時点で54名だったものが、直近では63名に、10名ほど増えております。支援者のほうも、昨年の4月時点で176名だったものが、直近では202名、30名近く増えている状況にございます。
もちろん、これで十分ということはございませんけれども、今後ともひょうご・スマイル条例の理念に則って、盲ろう者をはじめ誰もが円滑に情報取得できるような施策の充実を図りまして、ユニバーサル社会の実現に取り組んでまいりたいと存じます。今後ともご指導をいただければと思っています。
【コメント:こしだ浩矢】
兵庫県は障害者福祉については、結構他府県に比べても先進的な取組をたくさんされているというふうには認識しています。ただ、例えば聴覚障害者については、手話言語条例が悲願なんだということをおっしゃる中で実現できていないこともどうなのかなと個人的には思います。それで、評価としてはですね、予算も増えている中で取組が強化されているのはすばらしいことだとおもうんですけれども、やはりこの障害者の当人の方々が県の施策をどう評価しているかというところもしっかり目配せいただいて、その思いに応えられるような施策をしっかり取り組んでいただきたいということをお願いしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

5.県内地場産業の海外展開支援の取組について

【質問:こしだ浩矢】
次に県内地場産業の海外展開支援の取組について伺います。
地場産業とは、地域の伝統や技術、原料と結び付き、地域的なまとまりを持って特産品を作ることを言い、本県においても、郷土の歴史と伝統に培われ、地域社会と密着したさまざまな地場産業の産地が、県内各地で形成されております。これらの地場産業を持続発展させていくことは、人口減少・少子高齢化が進む中において、地域活力の維持に大きく貢献し、地域創生を進めていく上でも非常に重要なポイントになると考えます。
県内の地場産業は、私の地元長田のケミカルシューズをはじめ、多様な魅力あふれる商品が県内各地域から国内外に供給されていますが、その多くは安価な輸入品に押され生産額は減少傾向が強く、経産省の工業統計調査等によれば、過去10年間で主要地場産業の約8割において平均約4割生産額を減少させており、中には約7割近く減少している産業もあることから、危機的な状況となっています。これらの地場産業が地域創生のかなめとして持続的に発展していくためには、人口減少・少子高齢化が進む国内市場だけでなく、海外へ進出し、世界のマーケットに販売していくことが非常に重要となります。
県では、産地組合を中心に支援する地場産業ブランド力強化促進事業や産地内の中小企業の個社に対して、じばさん兵庫ブランド創出支援事業などにより、地場産品のブランド化や新たな販路拡大の取組を進めているところでありますが、既に取組を進めている産地以外においても、海外展開の支援策を更に充実させていくことが必要ではないでしょうか。
海外展開支援においては、地場産業の企業規模をはじめ、商品特性や販売先のターゲットが企業か消費者か等によって求める支援メニューも多様であると考えられます。
併せて、本県が設置している海外事務所との連携も重要であると考えます。昨年、アメリカ・ワシントン州との友好提携55周年に、友好代表団として兵庫県ワシントン州事務所を視察した議員によれば、駐在員の活動により、経済・産業交流支援に力を入れており、成果が出ていることを実感したとのことでありました。展示会やイベント開催にとどまらない、日常的かつ継続的な海外事務所を拠点とした現地活動などの支援なども積極的に推進すべきと考えます。
そこで、県内地場産業の海外展開についての現状と課題を伺うとともに、今後、海外展開に意欲のある個社への支援メニューの充実や、海外事務所との連携のあり方、将来展望について当局のご所見を伺います。

【答弁:井戸知事】
県内地場産業の海外展開支援についてであります。
兵庫の基幹産業であるものづくりは、阪神・播磨を中心とした鉄鋼、機械、化学等と、歴史・伝統に培われ、地域と密接に関わる多様な地場産業で形成されています。
こうした県内製造業の輸出比率でありますが、昭和50年の7.2%は、40年後の平成27年には20.5%に上昇しています。海外市場の存在が増してきていると言えます。背景には、人口減少・高齢化を受けて縮小する国内市場と成長する海外市場という構図があり、地場産業についても外需の取り込みに向かっているということであります。
こうした中、産地では安価で品質の向上するアジア製品との競合、為替変動リスクなど厳しい条件にもかかわらず、例えば、パリコレクションの衣装に採用されたり、友禅染との連携で国内見本市に出展した皮革製品、中国市場向けの太麺開発に取り組む揖保乃糸、ハーブのお香でパリのインテリア店を通じて欧州展開を目指す淡路島の線香など、積極果敢な挑戦が始まっています。
こうした海外ニーズに応える商品づくりや販路開拓の取組を広げていくことが今後の課題になります。
具体的には、地場産業ブランド力強化促進事業などにより、歴史や文化を織り込んだ物語性、山田錦など原料を含めた品質、グルテンフリーなど健康配慮、生産過程での環境負荷の低減など、世界で歓迎されやすいような商品の向上に取り組んでまいります。
さらに、営業販売面で信頼できる現地パートナーづくりが必要です。海外事務所や海外ビジネスセンター、JETROが持っていますネットワークを活用して個別相談への対応や海外需要、品質ノウハウ等のセミナーによる情報提供、海外ビジネスミッションの派遣といった総合的な支援をきめ細やかに行ってまいります。
かつて播州織は、全量が輸出されて地域の発展を牽引してきました。当時と環境が異なりますけれども、世界市場への拡張可能性を、いま一度、考えることは産地の将来に欠かせません。県としても、多様性に富む地場産業それぞれの個性を尊重しながら産地とともに展望を開いてまいります。

6.再生可能エネルギーの企業の導入支援について

【質問:こしだ浩矢】
次に、再生可能エネルギーの企業の導入支援について伺います。
本年9月23日に、ニューヨークで開催された国連気候行動サミットを受け、脱炭素社会への移行の必要性、対策の緊急性が改めて再認識され、政府・企業・自治体等の具体的な行動が求められています。また、昨今の夏の異常な高温や、経験したことのない大雨による災害の頻発など、地球温暖化による気候変動を身近に感じる昨今であります。
兵庫県では、2017年3月に策定した兵庫県地球温暖化対策推進計画により、温室効果ガス削減目標を2030年度に2013年度比26.5%削減とし、県内企業に排出抑制計画を策定してもらうなど、温暖化対策の取組を行っております。
そうした中で、今、RElOOという国際イニシアチブが注目されています。
RElOOとは、遅くとも2050年までに事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブで、Renewable EnergylOO%の頭文字をとってRElOOと命名されています。2014年に発足したRElOOには、2019年12月4日現在で、世界全体で216社が加盟、食品世界大手のスイスのネスレ、家具世界大手のスウェーデンのイケア、アパレル世界大手アメリカのNIKEなど、日本でもよく知られている企業が数多く含まれています。日本からも、ソニーやパナソニック、富士通、イオン、積水ハウスなど29社が参加し、今後も増加が見込まれています。
このRElOOに取り組む企業のメリットとしては、企業が再エネ調達の必要性を発信することにより、再エネ市場規模を拡大し、結果として安価で安定した再エネ供給が受けられるコスト削減効果や、環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資、いわゆるESG投資の呼び込みに役立つこと、さらにはRElOOに参加している世界中の企業と情報交換できることや世界的な対外アピールができることなどがあるとされております。
さらに、今年日本で発足した新たな枠組みの再エネ100宣言REアクションは、RElOOの趣旨に賛同しながらも参加基準に満たない年間電力消費量10ギガワットアワー未満の企業や自治体、医療機関、教育機関などを対象に参加を募る取組であります。参加団体や企業は、RElOOと同様にリーズナブルな再エネが必要であると、社会に対するシグナルを出すことにより需要を顕在化させ、再エネへの投資や再エネ推進政策を後押しし、再エネを希望する全ての電力需要家がリーズナブルに再エネを調達していける環境構築を目指しています。
こういった再エネ導入に取り組む県内事業者を増やしていくことは、地球温暖化対策を進めるだけではなく、県内企業の中長期的な競争力確保にも寄与する取組となることから、県として積極的にREアクションの啓発や導入支援を行っていくべきではないかと考えますが、県内企業の再生可能エネルギー導入促進に向けた取組について、当局のご所見を伺います。
【答弁:井戸知事】
再生可能エネルギーの企業の導入支援についてのお尋ねがありました。
SDGsやESG投資を背景に、企業の自立的、積極的な活動の一つとしてご指摘のありましたRE100が注目されています。
RE100は、年間消費電力量10ギガワット以上、REアクションは10ギガワット未満でありますが、使用電力を100%再エネに転換することを宣言するRE100や国内版のREアクションに県内企業の参加を促すことは、自らのCO2削減やサプライヤーの再エネ転換にもつながると考えております。併せまして、再エネ需要拡大に伴う地域再エネ発電事業者の創出や育成にも効果があります。
本県では、企業に対しまして県条例に基づくCO2排出抑制計画制度で、再エネ発電設備の導入を支援しています。木質バイオマス発電を設置した赤穂市内の企業では、約19%の削減効果がありました。また、各種セミナーや中小企業者への設備設置資金の融資を通じて再エネの導入を後押ししています。
さらに、地域に賦存する再エネ資源を活用した地域発電を進めています。県の無利子貸付で再エネ発電設備を設置した地域発電事業者から再エネ電力を調達して県内で販売する地域新電力も現れてきました。このような動きを更に発展させるため、県ではREアクションを契機に再エネ比率を高めようとする企業と地域発電事業者、地域新電力をつなぐ仕組みづくりを検討してまいります。
経済と環境との観点から、REアクションの窓口であるIGES、地球環境戦略研究機関や企業団体とも連携しながら発電から消費まで県内での再エネの地産地消を進めて、県内企業の再エネ導入を支援してまいります。
ちなみに、RE100への加盟企業は、まだ残念ながら県ではありません。ただ、REアクションにつきましては、1企業が入っております。これらを更に加入を進めていく必要があると考えています。

7.子供の通行する道路の安全対策について

【質問:こしだ浩矢】
次に、子供の通行する道路の安全対策についてお伺いします。
兵庫県では、平成30年中、約2万5,000件の人身事故が発生し、そのうち子供が関係する人身事故が1,000件を超えており、子供を交通事故から守るための安全対策が求められています。2012年の京都府亀岡市で発生した登校中の児童等の列に自動車が突入する事故をきっかけに、学校、PTA、教育委員会、道路管理者、警察等が通学路の緊急合同点検及び点検結果に基づく安全対策を実施しており、2013年には、継続的な通学路の安全確保に向けた取組を推進するため、学校、道路管理者、警察等が連携し、市町が通学路交通安全プログラムを策定して対策の一層の推進を図ってこられました。
さらに、昨年度には、通学路安全対策5箇年計画を策定し、通学路交通安全プログラムに位置付けられた要対策箇所について、計画的な歩道整備等の推進を図っています。
ところが、本年5月に滋賀県大津市で信号待ちをしていた散歩中の保育園児らが、車同士の衝突に巻き込まれ、園児2人が死亡、1人が一時意識不明の重体、園児と保育士計13人が重軽傷を負うという悲惨な事故が発生しました。
この事故を受け、政府は6月に未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策を閣議決定し、全国で9月未までに、保育園・幼稚園等が道路管理者や警察と連携して点検を実施し、その結果を12月上旬までに取りまとめることとしています。
兵庫県では、この緊急安全点検に先行して独自の点検も実施し、独自点検と緊急安全点検の対策予定箇所が、通学路安全対策5箇年計画に更に上乗せをして対応が求められることになります。
道路の安全対策は、過去の事故の教訓を生かして命を守る対策を積み上げてきたものと認識しておりますが、全ての道路に防護柵付きの歩道を整備し、交差点のコーナーをガードする等の対策を進めることができれば、非常に安全性が高まることは当然でありますが、それを実行するには莫大な予算と期間が必要となります。
事故が発生した大津市では、スクールゾーンの保育園・幼稚園版であるキッズゾーンをモデル的に設置するなど、迅速な対策を講じました。歩道整備を中心とする通学路安全対策5箇年計画の推進も重要でありますが、キッズゾーンで用いられ、歩道整備ほど予算のかからないカラー舗装の設置のような、簡易でありながらも一定の効果が見込める安全対策をスピード感を持って同時並行で計画的に推進していくことが、社会的にも求められています。
そこで、子供が通行する道路の安全対策について、これまでの取組状況に加えて、通学路安全対策5箇年計画の対象以外の箇所への対応や、大津の事故のような新たな社会的ニーズヘの対応を含めた今後の対策の推進について、どのように考えておられるのか、当局の所見を伺います。

【答弁:荒木副知事】
通学路の安全対策についてお答えをいたします。
通学に利用されています県管理道路につきましては、これまで自動車交通量が1日当たり4,000台以上の区間を重点に対策を講じてきました。市町では、通学路交通安全プログラムを策定しておられます。
県では、このプログラムを踏まえ、通学路安全対策5箇年計画を本年の3月に策定をいたしました。今年度から令和5年度までに歩道の新設・拡幅、道路のバイパス化による通学路の安全対策確保など、約40キロメートルの整備を行ってまいります。用地買収など、地元地権者の合意に時間を要し、歩道整備の実施が5年間計画に盛り込まれてない区間につきましては、カラー舗装や防護柵の設置などによって交通事故対策に取り組んでまいります。
今年度、大津市での事故を踏まえ、6月には自動車交通量が1日当たり1万台以上の県管理道路の全ての信号交差点を、また9月には県下の全ての幼稚園・保育園に照会をいたしまして、危険箇所がありました箇所につきまして、安全点検を実施をいたしました。その結果、左折車両が園児を巻き込むおそれのある箇所や信号待ちの園児に自動車が突っ込むおそれのある箇所につきましては、国の補正予算等を活用して、令和2年9月までに防護柵の設置、さらにはドライバーに注意喚起を促す看板の設置などを実施をしてまいります。今後とも、道路等の通学路の安全対策につきまして、積極的に進めてまいります。

8.県立公園の活性化による集客拡大の取組について

【質問:こしだ浩矢】
最後に、県立公園の活性化による集客拡大の取組について伺います。
県立公園は、交流人口を増やす地域創生を進めていく上で、その集客力を生かすべき貴重な県の財産であります。特に、子育て世代や若者等にとっては、休日のお出かけ先となる魅力あるスポットをネット等で探して遊びに行くので、公園の魅力付けや個性を多くの公園の中から選択してもらえるよう際立たせることが重要であると考えます。そういった競争優位や個性化の視点での公園の整備を進めていくことが必要ではないでしょうか。
また、公園活性化の事例として、大阪市の大阪城公園では、電通を代表者とし、読売テレビ放送、大和ハウス工業、大和リース、NTTファシリティーズの大手企業の計5社で構成する大阪城パークマネジメント共同事業体による管理運営を導入し、施設整備やイベント開催等の魅力付けを積極的に行うことで、集客力や収益力を向上させることに成功しています。
それまでの市の管理では、2014年度に約4,000万円の赤字が出ていましたが、共同事業体によるパークマネジメントへの移行後は、毎年の納付金が2億円以上となり、コスト削減と公園の活性化を同時に実現できた成功事例となっています。
確かに、大阪城を擁し、外国人観光客も多数訪れ、年間来場者数が1,000万人を超す大阪城公園は別格な公園であると言えるかもしれませんが、パークマネジメントの仕組みを取り入れることで公園のポテンシャルを生かし、飛躍的な進化が図られた点は大いに参考にすべきであります。
本県の都市公園の入り込み数は、県立明石公園が246万人、尼崎の森中央緑地が60万人、有馬富士公園が75万人、播磨中央公園が42万人、赤穂海浜公園が46万人となっており、各地域における重要な集客施設となっていますが、地域創生の観点から、もっと大胆な公園の魅力付けによる集客、収益のアップを図りつつ、効率的な運営を実現することが求められると考えます。
2017年に都市公園法が改正され、公園にカフェなどの飲食店や売店等の収益事業を行う施設を、民間事業者が公募により設置し運営していくことができるPark-PFIと言われる仕組みができました。
この制度は、民間事業者が収益施設を設置するだけではなく、園路や広場などの公園施投の整備も一体的に行うことで、民間事業者の柔軟な発想と資本を導入しようとするもので、公募による設置管理許可期間が特例的に長くなるなど、事業者にもメリットがある制度と聞いております。
現在、県内都市公園の指定管理者は公募をしておりますが、結果として15公園のうち13公園で公益財団法人兵庫県園芸・公園協会が指定管理者として運営管理していると聞いております。アイデアや工夫次第で集客力向上や収益性の確保が期待できる特定の県立公園については、Park-PFIを活用しながら、民間企業が参画できるようなフレームを提示し、更なる公園活性化策にチャレンジしていく必要があると考えます。
そこで、公園活性化策についての現状や課題、今後の取組について当局のご所見を伺いいたします。
【答弁:井戸知事】
県立公園の活性化による集客拡大の取組についてです。
本県では、県立公園の集客拡大や魅力向上に向けて、これまで尼崎の森中央緑地においてPFI事業により屋内プール等から成る尼崎スポーツの森を整備して、園地来園者の約7割が利用しておられます。西猪名公園等では、スポーツ用品メーカーが指定管理者となってスポーツ教室やイベントを定期的に行っています。
平成29年度には、淡路島公園で企画提案コンペを行い、体験型アニメパーク、ニジゲンノモリがオープンし、来園者数はオープン前の2倍になっております。令和2年度には、事業者からの使用料収入が指定管理料の年間約7,100万円を上回ると見込まれています。
来年夏には、ゴジラをテーマとした新施設がオープンし、更なる来園者の増加を期待しております。さらに、他の公園でも積極的に民間活力を導入していくため、県立公園での収益事業の実現可能性を図るマーケット・サウンディング調査、事前に可能性を企業から聞いてみるという調査を実施して、民間事業者7社からアイデアや整備手法などについて意見を伺いました。この結果、グランピング施設とかレストラン、ショップなどの提案があり、特に関心が高く集客が期待できる有馬富士公園や明石公園において事業者の公募を先行的に進めていきたいと検討しております。
今後とも、民間事業者のノウハウや資金力を活用した公園の魅力向上による来園者の増加を図り、公園の活性化につないでまいります。
目次