2017年6月6日 第336回定例会 代表質問

<質問項目>
1.井戸県政4期の総括と5選目を目指すに当たって
2.2025年大阪万博誘致に向けた兵庫県としての取組について
3.新しい運営体制における県立大学改革について
4.社会福祉施設等の監査体制について
5.兵庫県のインバウンド取り込み策について
6.産業部門における温室効果ガス削減に向けた取組について
7.人口減少時代におけるまちづくりのあり方について
8.次期学習指導要領の実施に向けた取組について
9.暴力団対策について

本会議場で質問するこしだ

1.井戸県政4期の総括と5選目を目指すに当たって

【質問:こしだ浩矢】
神戸市長田区選出、公明党・県民会議の越田浩矢でございます。
一括方式にて、9項目、公明党・県民会議を代表いたしまして質問を行います。
まず初めに、井戸県政4期の総括と5選目を目指すに当たっての知事の決意についてお伺いをいたします。
昨年末に、公明党兵庫県本部として、井戸県政4期16年について県政評価を提出いたしました。井戸知事は、これまでの4期16年で、震災からの創造的復興を成し遂げ、「元気兵庫の実現」に取り組み、「創造と共生の舞台・兵庫」を目指して県政運営にリーダーシップを発揮してこられ、その功績は高く評価するところであります。
しかし、一方で、今回の5選目への出馬に対して、権力の集中や施策のマンネリ化、組織の硬直化などの多選の弊害を指摘する声があることも確かであります。
時代は、本格的な人口減少社会が到来し、AIやIoT、ビッグデータ等の急速な技術革新は第4次産業革命とも言われ、社会や経済、既存の価値観等が大きな変革のうねりにさらされています。この激動の時代に、兵庫の多様な地域性を生かしつつ活性化を進める地域創生は、斬新で大胆な発想による施策立案と強力なリーダーシップによる実行なくして成果を上げることは困難であると考えます。
特に人口減少の課題については、人口の社会減が全国的に見ても最下位レベルで推移していることに対し、強い危機感を持って適切な対応をとることが必要であります。
その意味において、知事5選目を目指すに当たっては、単なる原点回帰や従来の県政の延長線上ではなく、明年の県政150周年を区切りとして、次の目指すべき新しい兵庫の姿を県民に示しながら、新たな決意と斬新な構想力で県政推進に取り組まれることが必要であると考えます。さらに、二元代表制のもと、県政運営については、議会との連携をより一層図りつつ、県民目線で施策の推進に努めていただきたいと思っております。
そこで、井戸知事ご自身で、この4期16年についての成果と課題について総括するとともに、5期目の県政で目指そうとされている兵庫の新しい姿や、その実現に向けた決意についてのご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
公明党・県民会議議員団を代表しての越田浩矢議員のご質疑にお答えいたします。
まず、井戸県政4期の総括と5選目に向けた決意を述べよということでございました。
この4期16年を振り返りますと、県民の幸せを具体化するという基本目標を目指すことは、終始一貫変わりませんが、その時々の県政課題に果敢に取り組んできたと言えると思っています。
第1期は、創造的復興の実現、震災から10年で復興計画をほぼ達成することができました。
第2期は、高齢被災者対策やまちづくりなど、残された課題の解決と小規模集落元気作戦の展開など、地域の元気づくりに取り組みました。
第3期では、リーマンショックで顕在化した疲弊した財政を立て直す行財政構造改革に乗り出しました。また、総合治水や津波防災インフラ整備など、安全基盤づくりに道筋をつけることができました。
そしてこの任期、4期では、本格的な人口減少社会を初めて迎える中で、活力を保ち続ける地域を創る地域創生への挑戦を始めました。
今後の課題は、地域創生を軌道に乗せ、兵庫を新たな発展に導くことです。目指すのは、活力あるふるさと兵庫の実現です。これまで以上に、県民目線、現場主義に徹し、従来の発想や枠組みに捉われず、新たな課題に先頭に立って挑戦してまいります。
まず、その方向性を示す2030年の展望を県民とともに描き、具体化してまいります。そして、保育所定員の大幅増など、子育て環境の飛躍的な充実。二つに、2025年問題に対応する介護体制の整備。三つに、病気を予測し予防する先制医療の実用化など健康長寿社会づくり。四つに、航空機、水素など次世代産業の拠点形成。五つに、働き方の改革と二地域居住など、新しい時代にふさわしいライフスタイルの普及。六つに、地域の魅力を開花させる県政150年記念プロジェクトの展開など、県の総力を挙げた取組を行ってまいります。そのためにも、平成30年度の収支均衡を目標とする行財政構造改革を成し遂げ、県政の安定運営の基盤を確立しなければなりません。
県議会には、行財政構造改革、地域創生など、県政を左右する主要な施策の枠組みに条例まで制定していただくなど、共に重要政策の推進を図ってまいりました。
今後も議会と情報共有を図り、共に取り組む姿勢を貫き、引き続きご理解、ご支援をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

2.2025年大阪万博誘致に向けた兵庫県としての取組について

【質問:こしだ浩矢】
2問目の質問は、2025年大阪万博誘致に向けた兵庫県としての取組についてであります。
政府は、4月11日、2025年国際博覧会、万博の大阪誘致を目指す方針を閣議で了承し、同24日、パリの博覧会国際事務局BIEに安倍晋三首相名の立候補表明文書を提出しました。既に、フランス・パリが、昨年11月に開催地として立候補の申請をしていましたが、5月には、ロシア中部エカテリンブルクとアゼルバイジャンの首都バクーも手を挙げたことで、4都市が立候補することとなり、開催地が決まる2018年11月のBIE総会に向けて本格的な誘致活動が始まり、日本としても官民を挙げて誘致活動を加速させることとなります。
政府が掲げる大阪万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」で、グローバル化で競争が激化し、人工知能AIなどの新技術も生まれる中、一人ひとりが能力を生かし輝ける社会・経済の未来像を提示し、新たな社会変革への動きにつなげるべきだと指摘し、大阪府の基本構想案「人類の健康・長寿への挑戦」よりも幅を広げたものとなっています。
開催地は、大阪市の人工島夢洲を会場に、2025年5月から11月の185日間開催する計画で、人工知能や仮想現実VRなどの最先端技術を活用した新ビジネスが一堂に集められます。
経済産業省の有識者検討会が3月にまとめた報告書によりますと、来場者は約2,800万から3,000万人、経済波及効果は約1兆9,000億円が見込まれています。
今回の波及効果には、万博開催前後のイベント開催や観光客の増大、次世代の端末やサービスの普及などによる誘発的効果の試算値は示されていませんが、大阪府は、誘発的効果は4兆1,000億円で、直接的な波及効果と合わせた経済効果全体は6兆4,000億円に上ると試算をしています。
このような大きな誘発的効果が期待される万博誘致は、兵庫県にとっても本格的に取り組もうとしている地域創生に一層の弾みをつけ、大きく前進させることができる絶好のチャンスとも捉えられます。
さきの2月定例会では、ひょうご県民連合の向山議員の質問に対し、関西広域連合の構成団体として県民へのアピールに積極的に協力していく、また、万博来場者を兵庫に呼び込むためのPRや受入環境整備と併せ、食、農、観光が一体となった魅力アップを進め、世界から企業と人が集う兵庫、未来への投資が進む兵庫の実現を目指すとの答弁がありましたが、現在まで誘致に向けての県としての具体的な取組やスタンスについて方針が表明されていません。
そこで、本県における万博の経済波及効果の想定を踏まえ、関西広域連合としては積極的に誘致活動を行っていこうとしている中で、連合の一員でもある兵庫県はどのように誘致に関わっていくのか、特に大阪府とどのように連携を図りながら万博誘致に向けて取り組んでいくのかについて、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
続きまして、大阪万博に向けた兵庫県としての取組についてのお尋ねです。
2025年開催を目指す大阪万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、「多様で心身ともに健康な生き方と持続可能な社会・経済システム」をサブテーマとしています。
関西で開催する意義としては、まず和食など豊かな文化の発信地であり日本の豊かさが実感できる。二つに、健康・ライフサイエンス分野の世界的な集積により、健康・予防から治療までのイノベーションを喚起できる。三つに、阪神・淡路大震災を乗り越えた社会の姿を提示できる。これらのことなどを挙げています。また、関西、兵庫にとって、2021年ワールドマスターズゲームズ関西のレガシー、遺産を引き継ぐ博覧会ともなると考えます。
本県としては、御食国ひょうごの食文化や、神戸医療産業都市をはじめとした健康医療産業の集積、阪神・淡路大震災からの創造的復興を成し遂げた経験などの強みを持っています。県内における機運醸成を図るためには、これらの資源を最大限活用して、できれば、これらの意義の発信やテーマに関連した集客イベントの開催など、万博期間中の関連イベントについて積極的に取り組んでいきます。
また、関西全体に開催の効果が波及するよう、関西広域連合が4月に設置いたしましたワンストップ連絡窓口であります誘致対策会議とも連携しながら積極的な活動を展開します。
いずれにしても、まずは日本、大阪での開催を実現しなければなりません。経済界と大阪府・市が中心となる誘致委員会の一員として、友好関係のある海外の省州県などに周知して協力を依頼するほか、友好関係にあるBIE加盟国等へのロビー活動への支援についても積極的に取り組んでまいります。

3.新しい運営体制における県立大学改革について

【質問:こしだ浩矢】
次の質問は、新しい運営体制における県立大学改革についてであります。
兵庫県立大学は、平成16年に「21世紀にふさわしい県立大学の構築」というビジョンのもと、歴史と伝統を誇る神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学の県立3大学を統合して開学いたしました。平成25年には、自ら発想し、創造し、発信する自主・自立の大学運営を目指すため、公立大学法人として独立し、新たな出発を果たしました。開学から13年、法人化から4年が経過し、これまでの間、初代学長の熊谷信昭氏や前理事長兼学長の清原正義氏をはじめ、教職員の方々の大変なご努力で今日を迎えています。
兵庫県公立大学法人評価委員会の平成28年8月の報告によりますと、教育、研究、社会貢献の分野で特色ある取組について評価している一方で、学部・学科の再編を中心とする大学改革や外部資金の獲得などの面における課題とともに、特にグローバル化への対応について、他大学におけるグローバル人材育成に向けた取組に比べ見劣り感があり、県立大学の強みを生かせる分野における国際人材の育成を行うべきであると、厳しい指摘があります。
また、県議会においても前身大学のよき伝統や特色が見えにくくなった上に、統合によるメリットや法人化のメリットが見えにくいといった点も、これまで指摘されてきました。
県においては、本年4月から、理事長、学長分離の新しい運営体制のもと、中期計画に基づく大学改革を加速させ、総合大学としての強みや旧三大学の伝統を生かした特徴ある教育、研究、社会貢献が展開できるよう支援するとしております。
改革の目玉である専任の理事長が法人経営、学長が教学に専念できるように責任と職務を分離し、それぞれが連携しながらリーダーシップを発揮する体制を目指しているものでありますが、今年度の新しい人事では、理事長は井戸知事が兼務することとなりました。知事は、「滑り出しをスムーズにするため兼任するが、あまり長い期間は難しいと思っている」とコメントされておりますが、理事長、学長分離の本来の趣旨を発揮する上で、理事長職に求められる適性や能力はどういったもので、その人選の見通しとともに、グローバル化や大学間競争に勝ち、選ばれる大学になるための改革を理事長として知事はどう進めていこうとお考えでしょうか。
グローバル大学として、一躍有名となった秋田県の公立大学法人国際教養大学では、開学から13年、理事長と学長を1人が兼務していますが、大学運営について、学長からの諮問に基づき提言する組織としてトップ諮問会議を設置し、議長に明石康元国連事務次長を、委員にジェラルド・L・カーティスコロンビア大学名誉教授をはじめ、各界の著名な有識者が国際的な視野で新しい提言ができる体制で、常に進化できる大学運営を目指しています。
そこで、県立大学が21世紀にふさわしい県立大学の構築を目指す上で、大学改革の議論の活性化や少子化が進む中で大学間競争に勝ち抜けるグローバル化への対応や教員の評価のあり方も含めた研究教育レベル向上等について、新しい県立大学の運営体制のもとで理事長を兼務する知事として、どのような考えで大学改革を推進していこうとされるのか、ご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
次に、新しい運営体制における県立大学改革についてのお尋ねがありました。
県立大学は、新しい時代に対応する専門能力と幅広い教養と人間性のある人材の育成、そして地域の発展や県内外、人類の幸せに貢献する人づくりを目指す大学として建学されました。この建学の精神に立ち、旧三大学の伝統と総合力を最大限に発揮し、教育、研究、産学連携や地域連携などにおいて、個性、特色のある大学にしていかなければなりません。
このため、既に教育、研究の分野では、この4月に減災復興政策を担うリーダーを養成するための減災復興政策研究科を開設しました。社会貢献、地域連携の分野では、COCやCOC+など、地域貢献事業への取組に加えまして、産学連携の先端医工学研究センターをオープンしています。さらに、今後は専門性と総合性を発揮し、国内外で活躍できる人材の育成を図りますため、学部横断的な学部や学科再編に取り組んでまいります。
まず、環境人間学部のコース再編を今年度中に行うよう検討しています。また、二つに平成31年度を目指し、経済、経営系の新学部と文理融合の新学部を設置することを進めております。この夏には、具体的な再編案を示してまいります。
今回の学長と理事長の分離は、設置者から独立した特別大学法人であるだけに、理事長はどうしても当面の大学法人の運営に当たらざるを得ず、学長を中心とした教育、研究を担う体制を確立する必要があることから行ったものです。
学長は教学に専念し、早急に大学の再編案を学内で取りまとめ、実行する役割を担っていただきます。一方、理事長は学長とともに改革を推進しながら、法人経営を円滑に進めることを担う体制としました。学長と理事長の分離は、兵庫県立大学としては初めてとなります。当面、スタート時の円滑な運営を図るため、あえて知事が兼務したものです。
なお、次期理事長は大学運営に対する知見と経験を持っているとともに、設置者である県と連携しながら、学長とともに改革をやり遂げる実行力を備えた人物がふさわしいと考えています。

4.社会福祉施設等の監査体制について

【質問:こしだ浩矢】
4点目の質問は、社会福祉施設等の監査体制についてであります。
高齢化の進展や多様な社会福祉ニーズに応えるために、公立だけではなく、民間の社会福祉法人やNPOの運営による社会福祉施設が各地に増え、福祉の向上に大きく貢献をしています。しかし、その一方で、その運営や経営においてさまざまな課題が出てきており、例えば、障害者福祉施設における職員による利用者への虐待や施設の安全管理体制の盲点を突いた事件、基準を満たさない保育所運営などについて、テレビや新聞で連日報道されております。
本県においても、姫路市のわんずまざー保育園が大きな問題として取り上げられましたが、この保育園は、県の認定を受けた2015年当初から多くの私的契約利用児を受け入れ、保育室の面積基準を満たさないなどの不正な状態があり、その後も虚偽報告や書類の偽造を繰り返し、定期監査時には不正常な状態を隠蔽するなど、極めて悪質な経営体質が明らかになってきました。
また、平成28年1月には、姫路市に対し、同園が認定こども園であるにもかかわらず、市を通さなくても受け入れてもらえるなどといった風評があったため、同市は園長ヒアリングを行ったものの、園長が否定したため特別監査等は行われなかったとの話もあります。まずは、日常の運営体制を指導監督する立場にある姫路市の監査体制が問われるところですが、待機児童解消を目指して認定こども園の拡大を強力に推進してきた兵庫県としても、反省、改善すべき点があると考えます。
現在、県下の全認定こども園に対する緊急調査を実施するとともに、健康福祉事務所や政令市・中核市と連携して、監査等のあり方の検討や認定こども園審議会での意見を聴取し、再発防止策の検討や緊急調査結果報告の取りまとめが行われているところであります。
県としては、わんずまざー保育園をきっかけにした認定こども園の不正防止だけに限らず、介護関係の施設や障害者福祉施設などにも多様な補助メニューにより経営面や運営面を支援していることから、社会福祉施設関連全体について見直しのきっかけとすべきではないでしょうか。ほとんどの法人は、厳しい経営環境の中にあってもルールを守り、使命感を持って適切に運営されていると考えられるので、過度な指導監督強化による再発防止策により、真面目に運営されてきた法人の負担が増えるような対策は本末転倒であると考えますが、今回のわんずまざー保育園のように悪意を持って不正を行っているようなケースを見逃さないための適切な対策も必要であります。
そこで、今回の事例を教訓にした監査体制の見直し、強化等を図っていくことについて、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
社会福祉施設等の監査体制の強化についてです。
昨年5月に発覚した全国各地で保育所等を運営する社会福祉法人による役員親族への利益供与問題や、ご指摘のわんずまざー保育園の不正事案など、近年、県内の社会福祉法人や福祉施設での不祥事が相次ぎ、監督官庁である県としても再発防止に向けた取組を進めています。
介護・障害・児童等の施設の主な経営主体である社会福祉法人に関しては、本年4月から改正社会福祉法が本格施行され、経営組織のガバナンスを強化するため、評議員会を必置の議決機関として理事会の上位に位置付けることになりました。また、大規模な法人には会計監査人の設置を義務付けるなど、法人制度改革が実施されています。
この改革を円滑に実施し、改革の効果を浸透させる必要があります。このため、本庁に新たに法人指導室を設置し、社会福祉法人に対する指導監督体制を強化しました。また、不正行為を抑制するため、社会福祉法人指導指針を策定して、罰則の強化など法改正に関わる部分を記載して、法人職員や施設利用者へのヒアリングの実施などを行いながら、県が実施する監査の着眼点などを示しております。
さらに、認定こども園の監査については、わんずまざー保育園の教訓を踏まえまして、全400園に対しまして緊急調査を実施いたしました。併せて、抜き打ち監査の活用や新設移行後1年以内の早い段階での施設監査、市町との協働による監査の強化などを検討しています。7月には、再発防止策を定めて徹底を図ります。
ご指摘のとおり、適正に施設を運営している事業者にとっては過度の負担とならないよう配慮しながら、今後も通報や苦情には迅速・的確に対応すること、指導指針やチェックリストを活用した法人・施設監査の重点化・効率化を図ることにより監査体制の強化に取り組んでまいります。

5.兵庫県のインバウンド取り込み策について

【質問:こしだ浩矢】
続いての質問は、兵庫県のインバウンド取り込み策についてであります。
観光庁が3月に発表した2016年の宿泊旅行統計調査速報値によると、日本人の国内ホテル・旅館等への延べ宿泊者数は、大型連休の日並びが良くなかったことや熊本地震、台風等の影響により、前年比マイナス3.5%となった一方で、外国人の延べ宿泊者数は、前年比8%増の推計7,088万人となり、平成19年の調査開始以降、過去最高を更新しました。
都道府県別に見ると、東京都の1,806万人をトップに、大阪府1,026万人、北海道692万人、京都府が500万人弱となっており、兵庫県はと申しますと、13番目、108万人と大きく水をあけられている状況です。それも、外国人旅行者の本県への訪問者数が前年比16.2%の増加であるにもかかわらず、宿泊者数については前年比10.6%の減少であります。
外国人延べ宿泊者数の伸び率を見ると、本県を含む三大都市圏が4.8%の増にとどまっているのに対し、三大都市圏を除く地方では13.2%増と、外国人旅行客の宿泊先が全国各地に広がっており、その理由として、上位の都道府県のホテル・旅館が満室で地方に流れていったということも考えられますが、外国人観光客の旅行ニーズが買い物から体験型へ移行しているとの分析もされております。こうしたニーズに的確に対応することが、兵庫県として求められているのではないでしょうか。
本県において、滞在人数が最も多い神戸市をはじめ、それに続く姫路、豊岡などの観光地、姫路城や城崎温泉などを結ぶひょうごゴールデンルートのPRに努めているところですが、五国からなる兵庫らしさを生かして、農業・漁業など農山漁村における体験、いわゆるアグリツーリズムや、スキーやスケート、マリンスポーツ等を体験するスポーツツーリズム、さらには各地域の伝統文化の体験といった、滞在に重点を置く体験型、着地型観光によって外国人旅行者拡大に向けた取組を進めるべきと考えます。
具体的には、観光産業、観光行政、それに関連する事業所や団体などが連携したDMO組織の拡大や観光拠点の整備、古民家など歴史的資源の活用、滞在型農山漁村の展開などは、大変有効な取組と考えます。
そこで、県として、外国人宿泊者数が対前年10.6%減となった状況についての分析とともに、今後のインバウンド対策にどう取り組んでいかれるのか、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
インバウンドの取組策についてのお尋ねがありました。
28年の本県への外国人旅行者数は149万人と、過去最高でありましたが、大阪府や京都府には大きく水をあけられています。本県の外国人宿泊者数は、過去5年間で全国平均を上回る約3倍と急増していますが、28年は10.6%、1割減となりました。これは、前年の27年が姫路城グランドオープンなど、追い風に大阪府や京都府を上回る大幅な増加、兵庫県73%増、大阪府44%増、京都府39%増。この大幅な増加となった反動で、一時的なものと分析しています。現に、この3ヵ月の1月、3月では6%増になっています。
外国人旅行者を更に増やすため、神戸、姫路城、城崎温泉を結ぶ「ひょうごゴールデンルート」を打ち出し、4月の西オーストラリア州での友好提携周年プロモーションでも、ワールドマスターズゲームズ2021関西とともに、トップセールスを行いました。
県がひょうごゴールデンルートを打ち出したことにより、県内各地の取組に弾みがついています。神戸では、クルーズ船外国人客の県内ツアー造成に、県市協調で助成してクルーズ客を取り込んでいくこととしています。また、神戸空港を基点とするひょうごゴールデンルート中心のツアー造成も進みつつあります。
二つに、姫路では、姫路城の三の丸広場や大手門付近をイルミネーションで装飾するナイト観光や書写山圓教寺などでの体験型プログラムの充実が進んでいます。
豊岡では、城崎温泉を中心に、神鍋高原のスキーや出石の城下町などの売り込み強化を行い、幅広い誘客を加速しています。
さらに、淡路でも洲本と関西国際空港を結ぶ定期航路の再開が予定されており、県では淡路島周遊バスの試験運行に取り組みます。
6月1日からは、アジア4ヵ所にひょうご国際観光デスク、韓国、台湾、タイ、香港を開設し、現地プロモーションを開始しました。引き続き、ひょうごゴールデンルートのPRに努めますとともに、リピーターの関心が高い体験型プログラムの充実を支援しながら、32年における外国人旅行者300万人を目指して誘客を促進してまいります。

6.産業部門における温室効果ガス削減に向けた取組について

【質問:こしだ浩矢】
続いての質問は、産業部門における温室効果ガス削減に向けた取組についてであります。
地球温暖化対策を進めるため、COP21のパリ協定の合意に基づき、国は、昨年5月に温室効果ガスの削減について、2030年度を目標に2013年度比26%削減の目標を掲げる地球温暖化対策計画を閣議決定しました。
これを受け、兵庫県では、国の対策に加えて県独自の取組を積極的に盛り込み、中長期的に国の目標を上回る温室効果ガスの削減を目指すとし、本年3月に兵庫県地球温暖化対策推進計画を策定し、県が取り組む施策を明らかにするとともに、県民、事業者、行政等のさまざまな主体の参画と協働によって、我が国の低炭素社会づくりをリードする取組にチャレンジをしております。
本県における温室効果ガスは、産業部門からの排出割合が6割を超えており、日本全体における産業部門の排出割合が約3割であることと比べると、2倍のシェアを占めております。
推進計画では、条例・要綱に基づく排出抑制の推進、省エネルギー設備の導入、エネルギー管理システムFEMSの導入促進、基金創設等によるCO2削減協力事業の推進などの取組によって排出削減を図ろうとしており、2030年度の削減目標も、産業部門の削減割合は、国の目標である10.6%に比べ、倍近い19.7%の削減目標を設定しています。まさに、産業部門における対策が本県における温暖化対策のポイントであり、温室効果ガスの主な発生源である民間事業者の取組を促すことに知恵を絞るとともに、国で進める削減対策に加えて県独自で実施する施策の実効性を上げていく必要があります。
企業側から見れば、温室効果ガスの削減は、従来はコストアップの要因であったものが、世界的な温暖化対策の流れにより、特に大企業においては、CSR――企業の社会的責任やコスト削減による競争力強化の観点等からも積極的な対応に迫られています。だからこそ、推進計画の実行に当たり、県のリーダーシップにより温暖化対策の機運を盛り上げるとともに、民間事業者の自発的な取組につながるインセンティブを用意するなどの工夫をしつつ、産業部門の温室効果ガスの削減目標達成に向け、大企業だけではなく中小企業も含めた兵庫の裾野の広いものづくり産業等全体で、実効性ある施策を着実に推進していく必要があると考えます。
そこで、兵庫県地球温暖化対策推進計画に基づき、特にその肝となる産業部門の温室効果ガス削減目標の達成に向けた施策の推進について、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:金澤副知事】
産業部門における温室効果ガス削減の取組について、私からお答え申し上げます。
国を上回る県の削減目標であります26.5%を達成するために、国対策に県の独自対策を上乗せいたしまして総合的な展開を図ってまいります。
特に、県内排出量の64%を占める産業部門では、大規模事業者に対して、条例に基づく排出抑制計画・措置結果の報告を求めますとともに、平成27年度から個別の事業者ごとに、その概要を県のホームページに公表いたしまして、自主的な取組を促進をしております。
さらに、今年度からは排出量の多い事業所に対して、公益財団法人ひょうご環境創造協会の省エネ相談員とともに指導・助言を行ってまいります。また、大規模な工場等の設置・増設に関しては、事業者にアセスメントを行わせて適切な指導を行います。
一方、中小企業に対する取組では、県内各地での省エネルギーセミナーの開催や、県内の大規模事業者が中小事業者に技術・資金等を支援して排出量を実際に削減するCO2削減協力事業を行っております。今年度からは、照明や空調などを最適に制御するエネルギー管理システム、EMSの工場・オフィスビルへの導入補助、省エネルギー・創エネルギー設備等導入のため、企業等から拠出していただく基金の創設や融資金利の引き下げ、事業者向けエコドライブ講習といった取組を進めてまいります。
さらに、特色のある温室効果ガス削減に取り組んだ県内事業者に対しましては、兵庫県環境にやさしい事業者賞を授与いたしまして、優れた取組を顕彰することで、自発的な取組を後押ししてまいります。
温室効果ガスの排出量が世界2位である米国のパリ協定からの離脱表明によりまして、国際的な取組への機運低下等も懸念されるところではございますけれども、本県の地球温暖化対策を後退させることはできません。新計画に基づいて、さまざまな業種の企業が立地している兵庫県の特性を考慮した温室効果ガス削減施策を推進いたしまして、我が国の低炭素社会づくりをリードする取組を積極的に進めてまいりたいと存じます。

7.人口減少時代におけるまちづくりのあり方について

【質問:こしだ浩矢】
7点目の質問は、人口減少時代におけるまちづくりのあり方についてであります。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した日本の将来推計人口によると、2053年に日本の人口は1億人を割り込み、2065年には8,808万人まで減少するとしています。同様の推計方法によると、兵庫県では2060年に人口が190万人減る、すなわち現在よりも約3割の減少となる見込みであります。
日本において人口減少が不可避であるとの認識は広く共有されておりますが、これに伴って起こる縮小問題については、十分な議論と課題の共有がなされておりません。人口減少を前提とした社会のあり方を考え、適応する政策の立案、実施が不可欠であると考えます。
人口が急激に減少していく状況におけるまちづくりのあり方として、都市をコンパクトシティ化し、都市間を道路や鉄道、情報通信などのネットワークでつなぐことで便利さを維持しつつ、インフラの維持管理費用を軽減することが一般的に有効であると言われており、既に全国で300を超える市町村において計画的にコンパクトシティ化を進め、持続可能なまちを形成しようとする動きがあります。
兵庫県においては、五国からなる多様な県土の個性や特徴を生かしながら、地域間連携や交流の促進を図るなど、地域創生戦略の推進によって活性化を図ることが前面に打ち出されていますが、そもそも地域創生の目標を達成したとしても、2060年に100万人、約2割の大幅な人口減少は避けられない見込みであることから、今のうちからまちづくりのあり方について、公共インフラの新規整備や維持のあり方と併せ、健全な危機感のもと長期的な戦略性を持って検討していく必要があると考えています。
他府県の事例を見ると、岩手県花巻市は、この40年で、人口集中地区の面積が1.9倍に広がった一方で、人口は16%減り、市全体でも今後20年で更に17%人口が減る見込みであることから、まちの拠点をJR花巻駅から半径1キロ、バス停から半径500メートル以内などの基準を設定し、そのエリアに病院や保育園などを集め、住宅は土砂災害のリスクが低い区域など、二つのエリアに絞り込む計画を立てています。
また、北九州市では、住宅を市街化区域の6割程度に絞り込み、まちの拠点を明確化する計画を立てています。
兵庫県では、県が策定した都市計画区域マスタープランに沿って、現在、10市町で立地適正化計画に取り組んでいるところでありますが、目指すべきまちづくりの方針が住民に浸透しているとは言えない印象であります。地域性によって、まちづくりのあり方も、それぞれの特徴と多様性を尊重すべき面があることは当然でありますが、中長期的なまちづくりの方向性としては、計画的に時間をかけながら、拠点となる集約地域への移転を緩やかに誘導することを進める必要があります。
また、空き家対策や土砂災害、津波の甚大な被害想定がある地域からの移転問題等の課題についても、計画的な居住地域の集約の観点を踏まえた政策立案が必要であると考えます。しかしながら、全国的にもコンパクトシティ化は、往々にして住民の反発を招くことが多く、これまでの先進的な取組において失敗を重ねてきたことも確かであり、困難を伴う政策であります。
そこで、人口減少時代におけるまちづくりのあり方として、コンパクトシティ政策推進の観点も含め、100万人の人口減少に対応する中長期的な視点で戦略的なまちづくり政策を市町と連携しながら推進することについて、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
人口減少時代におけるまちづくりのあり方についてのお尋ねがありました。
本県の都市計画区域マスタープランでは、人口減少下でも大都市部への一極集中ではなく、各地域が都市機能を分担・相互連携するとともに、地域間を交通ネットワークで結び、地域全体で多様な機能を確保する地域連携型の持続可能な都市構造を目指しています。
また、住宅や商業機能を中心部へ誘導する立地適正化計画は、県内でもたつの市など3市町で策定済みです。ただし、これらの計画においても、過度な誘導は行わず、駅前再整備など、中心市街の活性化を図るとともに、山裾などの災害危険性の高いエリアや工業地域への住宅立地を避けるといった内容になっています。
2060年には、県下で約100万人の人口が減少する見込みですので、例えば、神戸では23万人、尼崎では11万人、西宮で4万人など、地域で格差があります。また、人口密度や医療・福祉・商業等サービス施設の立地状況も都市によって異なります。
したがって、効率性のみを重視し、行政主導で一律にコンパクト化を推進するよりも、むしろ各地の特性、課題に応じたきめ細かい対応を図るべきだと考えています。
例えば、高度成長期に人口が急増した郊外住宅地においては、コンパクト化の要素も含めて、まちの再編が求められます。このため、兵庫県ニュータウン再生ガイドラインに基づきまして、住宅リフォームを活用しながら、高齢者の住み替え、若年・子育て世代の誘導を推進し、多世代が支え合うまちづくりを進めます。
また、地方都市では、ネットワークの構築を重視して、都市機能の役割分担・相互連携により、各地域が活力を持って自立できる都市構造を目指していきます。
もとより、まちづくりはふるさとを愛する住民の皆様が主体的に将来像を描いて実現していくものです。今後とも、参画と協働のもと、市町や住民の皆様と課題を共有し、多彩な個性が発揮され、連携の力で全体としての魅力を更に高めるまちづくりを目指してまいります。
以上、私からの答弁といたします。

8.次期学習指導要領の実施に向けた取組について

【質問:こしだ浩矢】
続いての質問は、次期学習指導要領の実施に向けた取組についてであります。
今年3月、文部科学省より次期学習指導要領が告示されました。約10年に一度のペースで、社会の変化やニーズに対応すべく見直しが行われてきましたが、今回の改訂では、2045年には人工知能が人類を超えるシンギュラリティに到達するという指摘もある中、グローバル化、情報化、技術革新等による劇的な変化が全ての子供たちの生き方に大きな影響があるという認識に立ち、予測できない未来に対応するために、社会の変化に主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、一人ひとりが自らの可能性を最大限に発揮し、より良い社会と幸福な人生を自ら作り出していくことができる教育を目指し、多岐にわたる改訂が行われます。
特徴的なものとしては、小学校ではグローバル化に対応するため、外国語を小学5、6年で教科化することや道徳教育の充実、プログラミング教育の必修化等をはじめ、授業の進め方についても、児童・生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を求めており、学習内容の広がりと併せ、授業の手法の改革を求める内容となっています。
また、従来から指摘されている教員の長時間労働問題やコンピュータ教育の充実に必要なICT機器等の整備、チーム学校による組織的な教育力の向上といった課題解決への取組も必要であります。
そこで、県教育委員会として大きな変革となる次期学習指導要領の実施に向けた準備を進めていくに当たり、現状における課題をどう認識しているのでしょうか。また、これまでの兵庫県独自の取組の成果も踏まえながら、子供たちや保護者、教育関係者など、県民に広く理解される新しい兵庫の教育を実現させていくために、次期学習指導要領へ、どのように対応しようとしているのか、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:高井教育長】
私から次期学習指導要領の実施に向けた取組についてお答えをいたします。
今回の学習指導要領の改訂においては、よりよい学校教育を通じて、よりよい社会を創るという目標を学校と社会が共有をして、両者が連携・協働しながら、子供たちが未来の作り手となるために必要な知識、力を育むことが重視をされています。
この新学習指導要領の趣旨の実現には、一つには、何のために、どのような改善をしようとするのかということを教職員間で共有をすること。二つには、子供たちの学習に対する主体性を引き出すための教員一人ひとりの指導力の向上。三つには、現代的な諸課題に対応する資質・能力を育成するための教科横断的な学習の充実。そして、四つには特に小学校では新設をされます英語に対応するために、教員の英語を教える力の育成とその授業時間の確保などが課題となってまいります。これらに対応するためには、学校全体として教科間の時間の配分ですとか、人的な体制などの確保に向けた活動の強化が必要でございます。
そのため、全ての管理職を対象に学校経営研究協議会の場で、学習指導要領の改訂の趣旨、内容についての周知徹底をまず図ります。また、加えて、今年度新たに全ての市町教育委員会及び各教科で指導的な役割を果たしてもらうべき教員を対象とした新学習指導要領の地区別説明会を今年夏、夏季休業中に実施をする予定でございます。その際には、保護者等地域の皆様にも参加を呼びかけて、理念の共有を図っていきたいと考えています。
小学校での英語教育につきましては、平成26年度から教員を対象とした英語教育研修を行いますとともに、モデル地区での小・中・高等学校の系統性のある教育課程編成の研究に取り組み、その成果の全県への普及を図ることとしています。
また、今年度から英語に堪能な地域人材を英語の授業支援に活用する新たな事業を展開することとしています。
今後、これまでの兵庫独自の取組でございます兵庫型教科担任制等の指導体制やキャリアノート等の指導方法を土台として、トライやる・ウィークなどで培った地域とのネットワークを活用しながら、新しい学習指導要領の狙いの実現に努め、地域とともに特色ある兵庫の教育を進めてまいります。

9.暴力団対策について

【質問:こしだ浩矢】
最後の質問は、暴力団対策についてであります。
暴力団の事務所の運営を禁じる暴力団排除条例改正案が、本定例県議会で上程されています。現行条例では、学校や児童福祉施設等の敷地の周囲200メートル以内や、都市計画法上の住居系地域における暴力団事務所等の運営が禁じられておりますが、改正案では、全国で初めて禁止区域に商業地域と近隣商業地域を加えるほか、学校や児童福祉施設等の敷地の周囲についても、その設置が決まった時点で運営を禁じるなど、規制を強化するとのことであります。
暴力団情勢に目を向けますと、平成27年8月に、六代目山口組が分裂して神戸山口組が誕生し、これら暴力団による抗争状態が続く中、本年4月には神戸山口組内で内紛が発生し、組員の一部が任侠団体山口組なる組織を立ち上げたという大きなニュースが全国で流れました。そして、5月には、この内紛が原因と見られる傷害事件が神戸市内で発生したとの報道もあるなど、非常に危険な状況となっており、県民は大きな不安に包まれております。
このような中、神戸市内を中心に暴力団が組事務所を設置する動きも続いており、今年4月、神戸市中央区二宮町の商業系地域に指定暴力団神戸山口組が新たな拠点を設けたとの新聞報道もあったところです。建ってしまった暴力団事務所を立ち退きさせるのは、並大抵ではありません。
私の地元、長田区においても、住民の皆様が長期にわたり大変ご苦労されながら取組を続けておられる姿を目の当たりにしております。まずは、暴力団事務所を作らせないことが肝要であり、その点で条例によって規制区域を拡大する意義は大きく、改正は急務であると考えます。
一方、暴力団事務所の規制と併せて、暴力団員が活動しにくい環境づくりも大変重要な課題です。
昨年、私は警察常任委員会の管外調査で福岡県を視察しました。福岡県警察では、工藤會の取締りを徹底するため、暴力団員に対して専門的に職務質問等を行う特別遊撃隊を平成18年に発足させ、活発な街頭活動を展開することで、暴力団の弱体化に大きな成果を上げているとの説明を受けました。このような、特別部隊を作って暴力団員を徹底的にマークし、抑え込む現場活動は大変有効であると考えます。
また、福岡県の条例において、暴力団排除特別強化地域を定め、その地域内にある酒類提供飲食店に公安委員会が交付する暴力団の立入禁止標章の取り付けを呼びかける独自の取組を行うとともに、標章の取り付けなどの暴力団排除に協力している市民の恐怖を和らげるため、専門部隊を活用して警察側の対応を丁寧に説明した結果、市民や店主にも、こうした警察の取組への理解が広がってきたとも伺いました。
さらに、私が委員長を務めます警察常任委員会で「暴力団の壊滅に向けた対策について」という特定テーマ調査研究では、特別部隊の有用性を盛り込むなど、研究結果をまとめたところであります。
県警察では、5月末、歓楽街特別暴力団対策隊を立ち上げて、暴力団対策の強化を一層推進されるとの報道もあったところであります。
兵庫県内には、二つの山口組の本部があり、県警察においては、全国に先駆けたさまざまな暴力団対策を実施され、昼夜を分かたず大変なご苦労をされていると承知していますが、このような他府県の事例を参考にしながら、取り入れるべき点は積極的に取り入れつつ、暴力団対策の強化を更に進めていくべきであると考えます。
そこで、今後の暴力団対策のあり方について、警察本部長のご所見をお伺いいたします。

【答弁:太田警察本部長】
暴力団対策についてお答え申し上げます。
暴力団情勢につきましては、一昨年来、六代目山口組と神戸山口組との対立抗争が全国的に継続している中、本年4月には神戸山口組の内部対立が表面化して、一段と緊迫した情勢にございます。
両団体の本拠が所在する当県では、昨年春以降、1年余りの間は対立に起因する大きな事件の発生はありませんでしたが、先月には神戸山口組の内紛に関係すると見られる傷害事件が発生しておりまして、今後、対立する三者相互間での抗争が大いに懸念をされる状態となっております。
暴力団の事務所は、暴力団の活動の拠点として周辺の環境や青少年の健全な育成に悪影響をもたらすのみならず、対立抗争時には集結場所や攻撃対象となるものでありまして、当県では平成22年に暴排条例を制定してその運営を規制してまいりましたが、条例施行後も規制区域外に暴力団事務所等を設置する動きが見られ、議員からもご指摘がございましたように、最近でもこうした動きを把握しているところであります。そこで、暴排条例を改正いたしまして規制区域を拡大する必要があると認められたことから、今般、この議会で改正案をお諮りしているところでございます。
暴力団の取締りでありますが、一昨年来、県警では対立抗争事件の防あつと暴力団の弱体化に向けて諸対策を強化して一定の成果を上げていると考えてはおりますが、最近の情勢を踏まえて、先週からは歓楽街緊急対策を実施することといたしまして、歓楽街特別暴力団対策隊を発足させました。
今後、この特暴隊による街頭活動や集中取締りを更に強化するとともに、行政や地域住民の皆様のご理解とご協力をいただいて、相互の連携のもと、議員からもご指摘がありましたように、新たな工夫や施策を積極的に取り入れつつ、暴力団排除活動を推進するなど、県警察の総力を挙げまして、県民の安全と安心を確保し、暴力団の根絶を目指してまいる所存でございます。

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