2013年2月26日 第317回定例会 一般質問

<質問項目>
1.暴力団排除に向けた取り組みについて
2.防犯カメラ設置補助事業について
3.新長田駅周辺地域のまちの活性化について
4.都市部の公共交通空白地域の対応について
5.終末期ケア問題について
6.県立美術館について

1.暴力団排除に向けた取り組みについて

【質問:こしだ】
初めに、暴力団排除に向けた取り組みについてお伺いします。
福岡県北九州市では、2010年の暴力団排除条例施行後に、暴力団組員の立ち入りを禁止する「標章」を掲げた店や市民が犠牲となる事件が続発するとともに、暴力団同士の抗争が続いており、治安に対する不安が高まっています。
わが兵庫県には、日本最大規模の指定暴力団山口組の本部が存在し、6代目山口組組長篠田建市が収監中、傘下の組長が神戸市内等に拠点を構えてきたことから、地域住民の生活の平穏を脅かす状況を作り出してきました。これまで、住民主体の運動により暴力団事務所が使用禁止となった実績もありますが、県内において暴力団排除条例施行前から存在する事務所や拠点については、いまだに周辺住民の不安を解消するに至っていないところが多く存在します。
私の地元神戸市長田区においても、山口組系傘下の拠点が存在します。2011年4月に篠田組長の出所により、拠点としての必要性が低下し、現状では若い組員が数名滞在しているのみで、物件は表面上「売物件」の看板が昨年より出ていますが、地元住民の積極的な排除に向けた活動の盛り上がりがあるにも関わらず、いまだ状況はこう着したままであります。
一方、暴力団排除に向けた活動にあたり、暴力団追放センターが公益法人として設立され、広報啓発や相談事業をはじめ、暴力団の排除に伴う民事訴訟支援等を実施しています。これは、住民自らが行う直接的な排除活動である暴力団事務所の進出阻止や立ち退きを求める訴訟活動を支援するため、県の暴追センターが訴訟費用の貸付事業を実施しているものでありますが、あくまでも貸し付けであり、1件数百万円から1千万円ほどかかるとされる高額な費用負担を最終的には住民が払う必要があること等から、その利用実績は低調であります。訴訟をためらう住民を後押しするには、これらの費用を助成する仕組みが必要であると考えます。本年1月に施行された改正暴対法では、暴追センターが住民に代わり組事務所の使用差し止め訴訟の手続きができる制度が新設され、その積極的な活用も期待されますが、報道では、本県の暴追センターの収入は5年前と比べて約4割も減少し、各種事業の実施にも影響がでているとのことであり財政的に課題があります。
また、暴力団が事務所や拠点の所有権を有している場合は、最終的にはその権利が暴力団以外に売却移転されることが求められます。しかしながら現状の暴排条例の規定では、売買契約行為を暴力団と一般の企業や民間人が行うことが期待できず、暴力団名義のまま売却することが困難であると思われます。この状況を打開するには、物件を行政や暴追センターが一時的に買い取りを行う等によらなければ解決に至らないと考えられます。
暴力団排除に向けて暴追センターの役割が強化されるなか、これらの課題のクリアに向けてどのように取り組むべきと考えるかご所見をお伺いします。

【答弁:塩川警察本部長】
暴力団排除に向けた取り組みについて、お答えします。
議員ご指摘の神戸市長田区に所在する施設は、静岡県を拠点とする山口組傘下の暴力団が、神戸における活動拠点として使用しているものと承知しております。
平成21年2月、近隣住民の方々が、暴力団追放のための協議会を設立し、現在も決起集会やパレードなど、継続的に住民運動をされているところであり、県警察としても、住民の方々と協力して、暴力団排除のための活動を推進しております。
暴追センターとして知られております暴力団追放兵庫県民センターにおいては、暴力団事務所などの撤去を求める住民の方々を支援するための事業の一環として、訴訟費用の貸し付けを行っており、これまでに7件の訴訟において、合計1,540万円の貸し付けを行い、その全てにおいて勝訴、または住民側に有利な形での和解が行われています。
今後は、新たに導入された適格団体による暴力団事務所の使用差止請求制度の周知に努めるとともに、自治体や企業を含む社会全体に、暴追センターの事業や暴力団対策基金条例の制定に対するご理解とご支援をいただくことが重要であると考えております。
また、暴力団事務所などの買い取りにつきましては、暴追センターの現在の財政状況に鑑みますと、直ちに暴追センター自身が、その譲受人になることは困難であると考えております。
他方で、暴力団事務所などが撤去される場合に、当該事務所などを買い取ることは、暴力団排除条例の趣旨に反するものではないと考えておりまして、県警察としても、必要に応じ、その旨の説明を行ってまいります。
県警察といたしましては、今後も、暴力団対策法や暴力団排除条例を効果的に適用するとともに、暴追センターと連携して、暴力団事務所などの撤去に向けた諸対策に全力で取り組む所存であります。

2 防犯カメラ設置補助事業について

【質問:こしだ】
次に、防犯カメラ設置補助事業についてお伺いいたします。
防犯カメラの映像が犯罪捜査の証拠として捜査の進展や犯人逮捕に大きく寄与していることは、テレビのニュース等で一般的にも広く認知されているところであり、だからこそ防犯カメラを設置することは、犯罪者の行為抑制策になるとともに、映像という確かな証拠を残すものとして防犯上有効な手段であり、犯罪を一層減らし、体感治安の向上に寄与するものであります。
本県においては、防犯カメラの設置の普及促進を図るため「兵庫県地域見守り防犯カメラ設置補助事業」として、まちづくり防犯グループ等の地域団体に対して、防犯カメラの設置経費に1カ所18万円を上限額として補助を行っているところです。平成23年度は166カ所29,834千円の実施実績があり、平成24年度は268カ所47,943千円の実施が内定するなど、防犯カメラの有用性が浸透するにしたがって設置ニーズも年々高まっている状況にあります。
しかし、来年度の防犯カメラ設置推進の当初予算案としては、1カ所当たりの補助額を従来の18万円から8万円に減額し、250か所分の2,000万円を計上しています。昨年度の当初予算が1カ所当たりの補助額18万円、補助件数150カ所、予算額2,700万円と比べると箇所数が100カ所増とはなっていますが、補助金額が10万円も減額され、予算総額も700万円減少しています。補助金額の設定の考え方は県、市町、地域団体のそれぞれが1/3ずつ負担するということであり、カメラ装置の価格水準が低下していることも理解できますが、県の補助に随伴する形で防犯カメラ設置補助事業を行っている市町は丹波市のみで、一部の市町は追加補助を検討されているようではあります。現状ほとんどの市町に補助制度がない状況であり、平成23年度の平均設置費用が23.9万円であったことからすると、8万円の補助では地元負担額は約16万円になります。補助金額をいきなり1カ所当たり18万円から8万円へと10万円も引き下げ、予算総額を700万円カットすることは、ニーズの高まりに対して逆行することとなり、あまりにも激変となる制度変更であります。
今回補助額を減額することで応募件数が減ることを懸念します。自治会などの地域団体の運営状況は厳しい状況にあり、補助額を削減されることによって防犯カメラ設置を断念せざる得ない地域団体もあるのではないでしょうか。
第2期地域安全まちづくり推進計画において、平成21年に約9万件あった刑法犯認知件数を3年かけて1万件減少させる目標設定をしていていましたが、すでに目標をクリアする約7万6千件にまで件数を減少させることができており、更なる刑法犯認知件数減少に向けて、街頭犯罪防止、体感治安の向上に非常に有効な防犯カメラ設置補助事業をこれまで以上に充実させるとともに、その普及啓発活動を積極的に展開し、設置台数や街頭犯罪件数減等の具体的な目標数値を明確に設定する等、取り組みをより強化することが重要になると考えますが、ご所見をお伺いします。

【答弁:山内政策部長】
私から、防犯カメラ設置補助事業について、お答えを申し上げます。
約3年前に防犯カメラの設置補助事業をスタートさせる際、設置経費を約50万円と見積もり、これを県、市町、設置者が3分の1ずつ負担するという考え方で、18万円の補助を行うことといたしました。
事業を開始してみますと、実際の経費は、初年度の22年度は平均で35万7,000円、23年度は23万9,000円と、想定より安価で低下傾向が続いております。
この3年間は、補助額を据え置いてまいりましたが、設置費の大幅な変化を踏まえまして、新年度からは23年度実績の金額、約24万円をベースに、その3分の1である8万円に見直すこととしたものでございます。
箇所数につきましては、24年度当初予算で150ヵ所を措置しておりましたが、多数の応募がございましたことから、25年度は、当初予算ベースで100ヵ所増の250ヵ所を補助することとしております。
市町につきましては、丹波市に加えまして、来年度から猪名川町が当事業への随伴補助を始めますほか、神戸市、加古川市、赤穂市でも、補助制度を設けるなど、市町の取り組みが進んでおりまして、さらなる連携を働きかけていきたいと考えております。
刑法犯認知件数の具体的な目標についてご指摘がございましたが、現在、パブリックコメント中の第3期地域安全まちづくり推進計画案の中で、25年から27年までの3年間で6万件台にまで減少させることを掲げております。この目標を達成するために、地域安全まちづくり推進員の活動強化や事業所防犯責任者の設置推進、防犯グループや自治会・婦人会など、多様な主体の連携による活動促進等により取り組んでいくこととしております。
防犯カメラにつきましては、客観的に箇所ごとの必要性の有無を判断することが難しく、目標数としては置かないものの、犯罪の抑止効果が期待されるとともに、地域の見守り力の向上に重要な役割を果たすものと考えております。
今後とも防犯カメラの設置推進につきまして、市町との連携も含めまして、積極的に取り組んでまいります。

3 新長田駅周辺地域のまちの活性化について

【質問:こしだ】
次に、新長田周辺地域のまちの活性化についてお伺いします。
神戸市は、阪神・淡路大震災の復興まちづくり事業のうち唯一継続している新長田駅南地区の事業完了を2015年度末へと2年間延長すると発表しました。本事業は震災復興の目玉であり、日本最大級の再開発事業であるにもかかわらず、震災から18年を経ても当該地区はいまだ充分に賑わいを取り戻すことができず、長田区の人口も震災前の7割台で足踏みしており、真に復興を成し遂げたとは言えない状況であります。
このことを踏まえ、兵庫県も復興基金事業を2年延長することとしています。復興基金の実施事業としては、家賃補助や内装工事費補助、にぎわい支援事業等を行うとともに、商店街振興に向けた支援事業も併せて実施してきました。これらの事業によってイベント開催による集客や販売促進、空き店舗の解消に一定の効果はあったと思われます。しかしながら、例えば復興市街地再開発商業施設等入居促進事業では家賃補助が受けられる3年間限定で入居するテナントが存在し定着が難しかったり、地元商圏の特性やニーズにマッチした効果的な商店街の魅力づくりや特徴づけを行うまでは至らず、まちのにぎわいの復活が実現できていない状況にあります。
このような状況の下、神戸市では、これまでの第3セクター「新長田まちづくり会社」主導の取り組みではうまくいかなかったことを反省し、抜本的な立て直しが必要と判断し、新たな商業活性化支援策として「にぎわいづくりプロジェクト」を組織して、地元の商店主自らまちづくり案を練ってもらい、その案を市と共有した上で市が支援することで、テナントの再配置や施設整備等の活性化策につなげていくという、これまでと比べてかなり踏み込んだ取り組みをすることを表明しています。神戸市の取り組みを踏まえて、県としても、新長田周辺地域のまちの活性化に向けて、これまで実施してきた事業を検証の上、より積極的に取り組むことが必要と考えます。
更に、三宮地区では、JR大阪駅北側の再開発エリア「うめきた」への対抗策として、神戸市と連携して企業誘致を図るため、県は法人事業税を軽減する産業集積条例の改正、神戸市は大規模オフィスへの家賃補助を行われる予定であり、思い切ったインセンティブのもと、今後、当該地区の活性化が大いに期待されるところです。
そこで、県として、新長田周辺地域においても、まちの活性化のために神戸市の新たな取り組みや、神戸市との連携や補完を考慮し、一層検討を深める必要があると考えますが、今後の方向性等、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
公明党・県民会議の越田浩矢議員のご質問にお答えいたします。
まず、新長田駅周辺地域のまちの活性化についてです。震災で大きな被害を受けた新長田駅周辺地域は、市街地再開発事業などにより、集合住宅、商業施設、事務所床等の整備が進められ、県としても神戸市と連携して、商店街のにぎわいづくりや、新たな情報サービス業の進出促進などに取り組んでいます。
このたびの新長田駅南地区の事業完了が2年間延長されたことに伴いまして、入居促進対策などの復興基金事業も2年間延長しました。特に復興基金を活用しました「まちのにぎわいづくり一括助成事業」は、大変有効だったと考えております。これは、住民の皆さん、商店街の皆さん等がプロポーザル、提案書を提出されまして、その提案書に基づいて専門家が認定をして、3年間で2,000万円の補助金を交付して、にぎわいの創出を図る事業であります。
神戸市の取り組みも、これに準じたものではないか、このように理解しておりますが、この事業によりまして、例えば三国志の英雄モニュメントが設置されましたり、あるいは鉄人28号を活用した地域プロモーションなどが実施されました。まちの個性、魅力の向上を支援したものと言えると考えています。
また、コンテンツ人材の育成の拠点となりますアニメ製作スタジオや、ITベンチャー向けのインキュベーションオフィスの開設に対する家賃補助、内装工事費補助など、空き店舗の入居促進も行っています。
これまで集合住宅2,416戸が完成し、入居が進みつつあります。また、鉄人28号モニュメントや三国志ガーデンを活用した集客イベントも定着し、土日を中心に、新たなにぎわいが創出されています。神戸マラソンのときの鉄人の周辺の人だかりは、大変にぎやかでありました。
しかし、周辺人口が総体的に減少しているのは間違いありません。また、高齢化の進展等から、商業施設の空き店舗、あるいは空き床が目立っています。全体としてのにぎわいを回復するには、まだ至っていない、大変難しい状況にあります。
こうした中で、先ほども触れましたが、神戸市が新たな発想で、地元の専門家の参画によるまちのにぎわいづくりの案を作成することとされていることは、歓迎をしております。
県としましても、商店街の地域コミュニティの核としての機能を高める子育てや高齢者の支援施設を設置され、買い物弱者対策を進めることを推進していきたいと考えておりますし、空き店舗を活用した魅力ある店舗の新規出店や開業促進を進めていきます。また、商店街の整備事業の一環として、共同施設建設や改修なども支援してまいります。
そして、神戸ロボット工房でのNIRO――新産業創造研究機構によります神戸ロボット研究所などによりますレスキューロボットの事業化などの新産業の育成もめざしております。
それと併せまして、もともと靴のまち・長田でありましたので、神戸シューズなど周辺の都市型産業の地域ブランド化を支援しております。
神戸市西部の交通の結節点でもあり、商業集積拠点でもあります新長田駅周辺地域の活性化は、震災復興の観点から重要です。地元の皆さんや神戸市とも協力しながら、地域のニーズや特性を踏まえたまちづくりを今後とも総合的に支援してまいります。

4 都市部の公共交通空白地域の対応について

【質問:こしだ】
次に、都市部の公共交通空白地域の対応についてお伺いします。
神戸市のような都市部における公共交通は、鉄道や路線バスなどの公共交通網が非常に発達していますが、住宅開発が六甲山麓に沿って行われてきたこともあり、バス路線から少し外れた山あいの住宅地等では、バス停までのアクセスの道程も坂や階段であるなど、高齢者等の交通弱者にとっては移動が非常に困難となっており、日常の買い物にも支障を来しているケースが発生しています。
県では、少子高齢化や長期にわたる景気低迷等の公共交通を取り巻く環境変化を踏まえ、「ひょうご公共交通10カ年計画」の改訂検討が行われていますが、そこでは、持続可能な公共交通の実現に向け、住民の方々に公共交通を利用して頂くことによって公共交通を維持し、未来に繋げていくことを目標としています。また、単に交通施策のみでは解決しえない場合においては、観光・福祉・環境・まちづくり・教育などの他の政策分野とも綿密な連携を図りながら、地域特性を踏まえた移動手段の維持・確保に努めていくとの方向性が示されています。
公共交通空白地域に対する対策としては、従来からの過疎地域を中心としたコミュニティバスや乗合タクシーの活用等に関して方向性を示されています。過疎地域の窮状を踏まえると、地方部の移動手段等の確保に向けた取組も大切と考えますが、それに加えて都市部の公共交通空白地域の対策についても、力を入れていく必要があるのではないでしょうか。
例えば、私の地元の神戸市長田区の丸山地区では、市バス路線が主要道を巡回し、本数も多くあって便利ではありますが、バス停から自宅までの間は山沿いで道が細く坂道も急である地域がこま切れに分散しています。この様な地域では、10カ年計画で触れられている、電動車いす、電動アシスト自転車、ミニカーなどのパーソナルモビリティを駅やバス停までのアクセス改善に活用することも考えられますが、地形的要因を考慮すれば、その活用はこのような地区には適してはおらず、デマンド型のサービスが求められる状況であります。しかし、マイカーボランティアやコミュニティバスといった手法では、タクシーとの競合が懸念されることから、寧ろ、都市部ならではの、台数が多いタクシーを活かし、「ひょうご公共交通10カ年計画」の施策として挙げられているスマートフォンによるタクシー配車アプリの活用、更には商店街とタクシーとが連携してエコショッピング制度を導入するなど工夫すれば、中心市街地の活性化にも資することが出来、一石二鳥の効果も期待できるのではないでしょうか。また、タクシー配車アプリを更に発展させ、同じ方面に向かう者同士が乗り合えるように、相手方や行き先のマッチングを図るようなソフト開発を行い、それを活用できるように推進といった施策の検討も課題解決に資するものと考えます。
ついては、この様な施策の展開を図りながら都市部の公共交通空白地域における移動手段を確保すべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
続いて、都市部の公共交通空白地域対策です。
本県の都市部では、地方部に比べまして、鉄道、路線バスなどの基幹交通サービスが充実していると言われていますが、高齢者等交通弱者の移動が困難な公共交通空白区域が生じていることが課題であります。これはご指摘いただいたとおりです。今年度改訂いたします「ひょうご公共交通10ヵ年計画」では、「持続可能な公共交通への再生」、「利便性の高い公共交通ネットワークへの再編」、そして「公共交通を地域で支える仕組みへの再構築」の3つを基本戦略として、都市部での高齢者等の交通弱者の移動手段の確保のため、鉄道の新駅整備を初め、コミュニティバス経路検索システムの充実や、電動車いす、電動アシスト自転車などのパーソナルモビリティの活用などを進めることにしています。
また、都市部であっても、神戸市丸山地区のような道路幅員が狭小で、坂道も急な地域では、ご指摘のように、ドア・ツー・ドアのデマンド交通でありますタクシーの活用を図ることも有効です。しかし、日常利用には、バスに比べ料金の割高感もあります。したがいまして、GPS機能を活用した配車アプリの導入に加えまして、ご提案のエコショッピング制度の導入や乗合タクシーの乗客をマッチングさせるソフト開発など、さらなる利便性の向上や料金抵抗を緩和する方策が必要だと考えています。
県としましては、タクシーが高齢者等にとってさらに利用しやすい移動手段となりますよう、神戸市等都市部の市町と連携し、タクシー事業者の主体的な取り組み、例えば、先ほど触れました乗合タクシーの運行などを促すとともに、交通分野の学識者の助言等も得ながら、タクシーの利活用の向上策の研究・検討を進めてまいります。
今後とも、ひょうご公共交通10ヵ年計画に基づき、都市部の公共交通空白地域における移動手段の確保に取り組み、高齢者など誰もが安心して移動できる社会の実現をめざしてまいります。

5 終末期ケア問題について

【質問:こしだ】
次に、終末期ケアの充実に向けた取り組みに関してお伺いいたします。
超高齢化が進む中において、人生の終末期を住み慣れた地域、思い出のある我が家で過ごしたいとのニーズは非常に高く、特に「余命が限られている場合、自宅で過ごしたいか」というアンケートの結果、8割以上の方が自宅で過ごし自宅で最期を迎えることを希望されるとのデータもあります。しかしながら、在宅ケアを行う場合の医療や介護の支援体制はまだまだ整っておらず、自宅で過ごすためには本人や家族がどうすればよいのかについての情報もなかなか入手することが困難な状況にあり、高いニーズに対応できず課題が山積していると言えます。
病院や介護施設よりも、自宅で暮らすことによって生活の質が劇的に向上し、生きる希望が増し、自立できる部分は自立し、より元気に過ごすようになれるとも言われており、公的サービスのコスト低減にも寄与できる部分もあることから、時代の要請として在宅での介護や医療の充実を図ることが強く求められています。
そうした中で、県の来年度予算において新たに「地域の看取りの促進事業」として合計18,348千円の予算が計上されています。
この事業では、終末期の方でホスピス病棟に空きがない場合や高齢者施設に入るには病状が重すぎる、老老介護や独居のため在宅療養が困難な方を対象とした「ホームホスピス」に対して補助を行うものであります。ホームホスピスは、NPO法人等が民家を借りたり購入したりして、末期がん患者らを受け入れ、住み慣れた地域や自宅に近い環境での生活を支援するところであり、兵庫県内には全国最多の4か所が存在しています。今後新たなホームホスピス開設時に、1カ所当たり最大500万円の改修費を補助する制度を新設するとともに、ホームホスピスの普及基盤を整備するため、評価委員会の設置や開設講座や従事者研修、普及フォーラムの開催などに取り組むことになっています。
また、終末期ケア人材育成事業では、特別養護老人ホームで人生の最期を迎えられるように特養職員等に終末期ケアの研修を実施したり、介護支援専門員トップリーダー養成研修事業では、在宅等において人生の最期を迎えるための終末期ケアに重点化したケアプラン等を作成できる人材育成により介護現場における終末期ケアの充実を図ろうとする事業も実施されます。
これらの取り組みは、全国的にみても非常に先進的事業であり、大いに評価できるものであります。
しかしながら、自宅で最期を迎えるために当事者にとって必要な情報や援助等が絶対的に不足している状況に変わりはありません。医療や介護現場において、終末期ケアに関する適切な情報提供が行われるようにするとともに、在宅やホームホスピス等での終末期ケアを希望すればだれもが選択できるように、人材の育成や環境整備、利用に対する補助等も含め、終末期ケアに対する事業を今後も拡大充実させていく必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いいたします。

【答弁:井戸知事】
終末期ケア問題についてお触れいただきました。県民が自宅等で安らかな終末期を迎えられる環境を整える必要がある。その一つは、終末期ケアに関する県民への情報提供をして、理解を深めることです。二つは、終末期ケアに従事する人材の育成です。三つは、看取りの場の確保などの整備が必要です。この三つの視点からの取り組みが必要だと考えています。
このため、まず第1の、県民に対しては、フォーラム等を通じまして、在宅で看取ることの意義など、意識啓発を行ってまいります。
第2の、人材育成としましては、今年度から在宅医療を担う医師、歯科医師、看護師等のチームを対象にした在宅医療地域リーダー研修を実施しています。また、新たに25年度からは、介護支援専門員を対象に、終末期ケアに対応でき、本人だけでなく、家族の不安にも応えられるような、介護支援専門員トップリーダーの養成に取り組みます。
第3に、終末期の場の整備としては、ホームホスピスの普及のため、25年度はモデル事業として3ヵ所に対しまして、立ち上げ経費を補助することにいたしました。また、そこで、開設者研修や従事者研修を合わせて実施し、運営支援を行ってまいります。
今後、このモデル事業の成果をもとに、医療関係者や在宅サービス提供者とともに、ホームホスピスの普及推進方策等を検討してまいります。この検討結果を普及推進に結びつけていきたいと考えております。今後とも県民が地域で終末期が過ごせる仕組みを構築する努力をしてまいりますので、よろしくお願いを申し上げます。

6 県立美術館について

【質問:こしだ】
最後に、県立美術館についてお伺いします。
兵庫県立美術館は、建築家安藤忠雄氏によって前面の海に接するなぎさ公園と一体的に設計され、建物そのものも鑑賞の対象となるような空間で構成される個性的な建築物でありつつ、兵庫ゆかりの作家による近現代作品を中心に約8000点の作品を所蔵し、近代日本洋画を代表する小磯良平、金山平三の2人の神戸市出身の画家の記念室も有し、話題性に富んだ国内外の作品を展示する特別展を開催している美術館であります。
県立美術館に期待される役割としては、県民に対して県内で身近に本物の美術作品を鑑賞できる機会を提供し、美しいものを見て感動する美的感性を養う教育的効果とともに、芸術文化振興の情報発信拠点としての機能や、付随的には県内外からの来館者を集客することによる地域振興に寄与することも期待されています。
こうした役割にどこまで応えられているかを図るバロメーターは、やはり特別展の入館者数に表れてくると考えます。しかしながら、県立美術館の入館者数の推移は、平成21年度の104万8千人をピークに、22年度が82万5千人、23年度が64万5千人、今年度は12月末現在ではありますが、41万4千人と年々減少していく傾向を示しています。特別展の収支の数値もピークの平成21年度は1億2,900万円の黒字ですが、昨年度は約6,900万円の赤字となっています。
一流の美術作品を幅広い視点から、様々なバリエーションで企画展示を行うことは美術館の役割として求められることでありますが、ぜひ鑑賞したいと思えるような魅力ある企画も同時に満たしていく必要があると考えます。
神戸市立博物館で昨年秋から今年の初めにかけて開催された「マウリッツハイス美術館展」は42万4,625人を集客し(この人数は県立美術館の4月から12月の8か月分の集客よりも多くなっています)、日銀神戸支店は兵庫県経済への波及効果は65億円であったと試算しています。現状の県立美術館の特別展に訪れている方の居住地は県外から約4割となっており、入館者が増えると地域経済への波及効果も期待できることから、芸術文化振興と地域振興の両立を目指すには、やはり集客できる特別展の企画実現に積極的に取り組む必要があると考えます。
素人考えで恐縮でありますが、他の美術館との共同企画や、巡回展などの取り組みにより作品の貸出コストの低減化を図りつつ、人気のある芸術家や美術館展等の作品を引っ張ってくる等の工夫はできないでしょうか。
また、宣伝告知活動も、県のホームページでさらに露出することや県の広報誌等様々な紙媒体に今以上に掲載するとともに、美術館入館者を周辺や県内各地での食事や買い物に誘導できるような商業施設との連携策も含め、県庁内の他部署と協力しながら様々な工夫の余地は残されていると感じています。
県立美術館の今後の取り組みに関して、教育委員会のご所見をお伺いします。

【答弁:大西教育長】
私から、県立美術館についてお答え申し上げます。
県立美術館は、美術作品の本物に出会うことで、人々に心のいやしと豊かさをもたらし、美術の楽しさを心から感じてもらいますよう、質が高く、それでいてかつ敷居の低い美術館をめざして、魅力ある展覧会を初め、さまざまな取り組みを行っております。
巡回展は、開館以来、ゴッホ、クリムト、そしてジブリ等の展覧会を開催して、人気を博してきました。現在開催中の「フィンランドのくらしとデザイン」展も、好調な来館者の状況にございます。また、ことしの6月からは、ルノワールなど、印象派コレクションの世界巡回展で集客の見込める「奇跡のクラーク・コレクション」を予定しております。
加えまして、他館との共同企画によります「だまし絵」展や「水木しげる・妖怪図鑑」展が、それぞれ31万人、18万人と、多数の観覧者を集めました。来月、この3月の下旬からは、ガンダムなど人気の高いアニメのメカデザインの先駆者を紹介いたします「超・大河原邦男」展を開催しますが、広く国内からファンが訪れるものと、このように期待しております。これからも、こうした魅力ある展覧会を開催してまいります。
また、子供たちの美的感性を育みますとともに、将来にわたって来館を促すために、学校教育との連携を積極的に働きかけまして、子供の来館を促進してまいりたいと考えております。
こうした中で、ことしの夏休みには、小学校4年生を中心にいたしました子供イベントの企画も行う予定でございます。
併せまして、県立美術館が県民や地域等の貴重な文化資源として広く愛され、活用されますとともに、相互の発展につなげていくということが重要でございます。
これまで取り組んできました「ミュージアムロード構想」を、神戸県民局などと協働で推進してまいります。例えば、近隣店舗によります「兵庫県立美術館応援店」の取り組みを進めたり、さらに、安藤忠雄氏を議長といたしました企業向けセミナー「みの会議 with ANDO」の開催など、魅力ある企画も積極的に展開していきたいと考えております。
今後とも、効率的で魅力ある展覧会の企画や、地域等とのさらなる連携強化を進めまして、また、インターネットを活用したタイムリーできめ細かな広報等を、県内各部局や各市町と連携しました取り組みを進めて、広報活動の充実強化にも取り組んでまいります。
県立美術館の魅力発信に今後とも努め、常に多くの来館者が集い、学び、楽しめる雰囲気の美術館にしてまいりたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

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