2013年9月30日 第319回定例会 一般質問

<質問項目>
1.防災減災に向けたソフト対策の推進について
 (1)「南海トラフ地震津波対策アクションプラン」の検討内容について
 (2)県民への防災減災教育の推進
2.ネットの利用に関する教育の強化について
3.空き家の有効活用について
4.UR借上県営住宅の継続入居者のコミュニティ維持の課題について

1.防災減災に向けたソフト対策の推進について

【質問:こしだ】
まず初めに防災減災に向けたソフト対策の推進について2点お伺いします。
東日本大震災の発生により日本列島は地震の活動期に入ったとされ、南海トラフ巨大地震の発生が危惧されていますが、30年以内にM8~M9クラスの地震が起こる確率は60~70%、50年以内では90%と言われています。内閣府の南海トラフ巨大地震発生時の最大被害想定では、死者32万人、220兆円の経済損失となることが発表されており未曽有の大災害となる可能性があります。しかし防災・減災に取組めば、死者は5分の1に、経済被害も半減できると言われていることから、県の最優先課題の1つとして早急且つ着実にハード、ソフト両面で防災・減災対策を進める必要があります。

ハード対策として兵庫県では「津波防災インフラ整備5箇年計画」を今年からスタートさせ、100年程度の周期で起こる津波は防潮堤で守り、1000年に一度クラスの津波は防潮堤が破られないようにして浸水を越流分だけにとどめる「減災」により被害を少なくする対策を今後10年間で進めるとしています。また自公政権では防災減災に向け、老朽化した社会インフラの点検、補修、整備を重点的に進める方針で、国の公共投資も今後本格化してくる情勢であり、ハード面での対策については、着実に進んでいくことが見込まれています。

しかし、南海トラフ地震の防災・減災に向けたソフト対策面については、県民の災害に関する知識や行動、意識レベルにはまだまだ多くの課題が残されています。具体的には、
①新聞記事によると旧耐震基準の一戸建て住宅のうち耐震化工事をしたのは県内では6.5%にとどまっており、県耐震改修促進計画では、地震危険住宅を45万3千戸から6万5千戸に減らす目標を掲げているが、全く進んでいない。
②家具の転倒防止等の屋内安全対策を行っている率が35.6%と目標である70%の約半分しかない。(県民モニターアンケート)
③県民意識調査によると、ハザードマップを見たことがあり活用している人は10.2%しかおらず、身近で起こる被害想定を認識していない。
④フェニックス共済の加入者数が東日本大震災発災から1年間で住宅再建、家財再建あわせて約15000人の大幅増加となった以降は、住宅再建については15万人台で頭打ちの傾向となっている
⑤神戸市において震災を経験していない住民の割合が昨年11月1日現在で41%に達し、震災経験の風化が危惧されている。
⑥県が取り組んでいる「防災力強化県民運動」の認知度が15.1%と低く、「安全な避難のための地域での取り組み」について、「していない」と答えた人が64.7%と地域での防災力がついていない。
などであります。
阪神・淡路大震災を経験し、南海トラフ地震の危険性が叫ばれていながら、将来起こりうる災害について自分のこととして捉えられず、備える行動ができていない状況にあることがこのような数字に表れています。この現状を打破していくために、防災減災力を高める知識や意識面の教育を強化し、地域性に応じた対策を各地域コミュニティや個人で、自助、共助の取り組みとして進められるようなプログラムや支援を用意するなどにより、生涯にわたって災害から身を守り生きることの大切さを育む災害文化の醸成に向けて取り組んでいかなければなりません。

(1)「南海トラフ地震津波対策アクションプラン」の検討内容について

そこでまず、地震津波に対する「備え」を如何に効果的に推進できるようにするのかが重要となります。
参考となる事例として、大阪市が2009年8月より実施している「防災力強化マンション認定制度」があります。建物の安全性や飲料水、食料など被災時の生活に役立つ物資や施設の備え、防災計画の策定などのハードソフト両面の対策がなされていると「防災力強化マンション」として認定されるもので、認定を受けるとマンション名が公表され、新築マンションの一部については住宅ローンの金利が引き下げられるメリットもあります。また大阪市に習い、今年4月から東京都墨田区では、災害発生から3日間避難所に行かずに生活できるマンションを認定する制度を開始し、認定基準を満たすための整備費や訓練などに補助金を出す取り組みを始めています。
兵庫県も是非この制度を見習うべきですが、このような認定制度はマンションだけでなく、個人や地域、企業の防災活動の取り組みについても基準を作成し、認定制度化することが考えられます。防災対策のメニューとして、災害時要援護者の支援体制、耐震補強実施率や、家具の転倒防止実施世帯率、災害用備品整備率や食料備蓄量、地震保険やフェニックス共済加入率、一定レベル以上防災訓練や防災啓発活動の実施回数などの数値を認定基準として設定し、地域や企業の実情に合わせてメニューを選択しながら取り組んでもらい、その達成度を公的に認定、公表(場合によっては表彰)することで、行動のモチベーションアップを図ることが可能になります。認定された地域や企業を公表することで、「安心して住めるまち」、「防災に貢献する企業」といったイメージアップにもつながり防災減災対策の進捗状況を見える化することが可能となります。また個人の防災認定は、ウェブ上にチェックシートを用意して、認定結果をfacebookなどのSNSにすぐに貼り付けられるようにすることで、広く防災認定制度をネット上で波及させながら、参加を促すことができるなどが考えられます。
現在、被害想定の精査、「南海トラフ地震津波対策アクションプラン」、「地域防災計画」の修正の検討が進められています。「南海トラフ地震津波対策アクションプラン」では新たな被害想定に基づく対策や行動計画等が提示されることになると思われますが、ぜひとも防災・減災に向けた自助、共助の取り組みが実効性のあるものとなるよう、認定制度を取り入れるなどの工夫をしてアクションプランの検討を進めていくべきであると考えますが、当局の検討状況やご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
公明党・県民会議議員団の越田浩矢議員のご質問にお答えいたします。
まず、南海トラフ地震津波対策アクションプランの検討内容についてのお尋ねがありました。
このアクションプランは、新たな被害想定に基づき、今年度末の策定をめざしております。ただ、この新たな被害想定の作業がいささか遅れておりまして、県民の皆様にご迷惑をかけておりますことをおわび申し上げますとともに、夏の末ごろにはと申し上げておりましたのが、もう9月の30日であります。秋には順次公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
その中で、対策を実施することで、死者数や建物被害をどれだけ減らすかを示した減災目標を設定したいと考えています。また、目標を達成するため、災害発生から復興までの被災地の様相をシナリオ化しまして、耐震化などの事前の備え、津波避難などの災害直後の対応、被災者支援の迅速な実施などによる早期の復旧・復興など、各段階で必要となる県の施策を体系化していきたい、このように検討しています。
減災目標の達成には、行政のみならず、県民、企業などさまざまな主体が協働することが不可欠です。ご指摘のように、県民の防災への関心を高めたり、楽しみながら防災を考えてもらう機会を拡大していくことも重要です。
県としましては、これまで防災活動に取り組む団体や個人の表彰、顕彰あるいは耐震化をさらに進めること、屋内安全対策などの防災対策のチェックリストの作成や普及などを行ってきました。また、ご指摘の認定制度に類するものとして新聞社が実施します防災学検定へ人と防災未来センターが協力して実施をいたしておりますこと、あるいはNPOが実施するキッズ防災検定への助成などを通じまして、県民が取り組みやすい施策を進めています。
また、従業員の消防団活動を支援するため、消防団協力事業所を認定させていただき、協力をいただいております。防火・防災管理が優秀なホテルなどの防火対象建物を認定する制度も持っております。企業の防災活動の取り組みをこのような形で支援をしております。
ご提案のような認定基準を満たす認定制度は、かなり高度なものと言えるのではないかと思います。相当高度な認定に対するインセンティブをどうするかなども合わせて十分検討しなくてはならないのではないかと思います。
アクションプランの策定に当たりましては、既に行っている取り組みをより効果的なものになるよう発展させ、盛り込むことにしておりますが、併せて、ご提案の認定制度のあり方についても、反映できるかどうか、十分検討させていただきたいと考えております

(2)県民への防災減災教育の推進

【質問:こしだ】
次に防災減災に向けたソフト対策のうち、県民への防災減災教育についてお伺いします。
南海トラフ大地震や津波について、従来の被害想定が見直されることにより、対策や知っておくべき知識も多くなるとともに、地震や津波に対する備えのあり方が変化しています。
例えば従来の個人での食料や水の備蓄は3日分としていましたが、最大被害想定では7日分の備えが必要とされています。また東日本大震災の経験によって得られた知見によって、それに学び活用すべき様々な教訓が蓄積されています。
更に地震や津波以外にも、備えるべき災害がたくさんあります。特に近年の異常気象により、その地域における観測史上最大の降雨量を記録した(集中)豪雨や、竜巻などこれまでに経験をしたことがない災害が発生しており、全国的にもその発生頻度が増す傾向にあります。気象庁は「特別警報」を新設して避難警戒のための情報提供を強化しようと取り組んでいますが、新しい警報の位置づけが国民に浸透するには時間がかかるとも言われています。
様々な災害に関する知識が日々更新されていく中で、県としても防災減災のための知識として学ぶべき事項を体系的・網羅的に整理し、県民がいつでも学ぶことができる体制を整え、また常に最新の情報に更新されるようにする必要があると考えます。特にレベル別、分野別に文字や図表等によるわかりやすい教材はもとより、質の高い映像教材を整備し、自治会の集まりや防災訓練時等に順次見て学ぶことができるように、デジタルコンテンツ化してWEB上からダウンロード可能なようにする必要があると思います。兵庫県には「人と防災未来センター」があり、全国でも先駆的な防災教育施設でありますが、阪神・淡路大震災を「忘れず」に「伝える」ことに重点が置かれていることから、具体的に災害にどう備えるのかという面を学ぶにはまだ足りない面が多くあり、今後更なる改良、充実を図る必要を感じます。
また、学習のモチベーション向上、効果を図る上でも、ひょうご防災リーダーよりも門戸の広くした、防災知識に関する資格試験制度を導入するといったことも有効であると考えます。

更に、釜石の奇跡につながった群馬大学大学院の片田教授の防災教育では、知識だけでなく「姿勢の防災教育」が強調されており、「避難の三原則」を釜石で徹底して教えられました。それは「想定にとらわれるな」「その状況下において最善を尽くせ」「率先避難者たれ」の3つで常に「自分の命を守る」という主体性の発揮を求めるものです。東日本大震災ではハザードマップで浸水想定区域に入っていないからといって避難せずに犠牲になった人が少なくないと言われています。心理学では災害時に自分だけは大丈夫という「正常化の偏見」に人間は陥りやすく、また、特別な異常をわざと目立たなくするようにする「同化性バイアス」や、まわりの人たちが動かないので自分も行動を起こさないという「同調性バイアス」といった心の作用があるとの分析があり、これらを乗り越えるためにも知識面での教育とともに、実際の災害を自らに起こりうるものとして想定した訓練等も重要となります。
防災減災教育は一朝一夕では進めることができない奥の深い課題です。継続的に息長く取り組み、防災を文化レベルまで高めて社会定着させていく必要があると考えます。更に学校における防災減災教育とも密接に連携して、多角的に推進していく必要があると考えますが、県民への防災減災教育、啓発の進め方について当局のご所見をお伺いします。

【答弁:杉本防災監】
県民への防災・減災教育についてお答え申し上げます。
本県では、阪神・淡路大震災の教訓を忘れることなく、安全・安心な社会づくりを進めるため、「ひょうご安全の日を定める条例」を制定し、県民がこぞって防災・減災活動に取り組むこととしております。その中で防災教育は重要な柱の一つでございます。
その推進に当たりましては、対象を地域の防災リーダー、一般県民、それから子供たち、3区分いたしまして、体系的に実施をさせていただいております。
まず、防災リーダー向けといたしましては、広域防災センターを中心に、県下各地で養成講座を開催いたしますとともに、修了生に対するフォローアップも実施をいたしております。
次に一般県民向けには、一つは、ひょうご防災特別推進員の派遣による地域でのワークショップ等の展開、二つ目は、総合防災訓練における住民参加型避難訓練の実施や地域における訓練への助成を通じた啓発、三つ目は、広域防災センターでの起震車等による体験型の防災学習、こういったことを実施をいたしております。
未来を担う子供たちに対しましては、防災副読本を活用した学校における防災教育はもとより、ダウンロード可能な災害学習ノートの作成と普及、それから夏休み防災未来学校の実施、学校の先進的な活動を顕彰する「ぼうさい甲子園」などを実施をしております。そして、これら全てに人と防災未来センターが関わるとともに、展示内容にも反映をさせていただいております。
今後、いただきましたご提案の趣旨を踏まえながら、これらの取り組みを一層発展させ、息長く推進することによりまして、大災害を経験した兵庫ならではの災害文化が定着することをめざしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

【再質問:こしだ】
では、防災教育について1点再質問をさせていただきたいと思います。
先ほど地域のリーダー、県民、子供と三つに分けて教育を行っていくというお話であったんですけれども、防災リーダーをしっかりと育成をしていながら、なかなか地域の中においてそのリーダーが活躍できてないのかなという実態もあると思いますし、また、県民全体を捉えて教育をしっかり文化まで根づかせていくとなると、やはりいろんな工夫とか、かなり今よりも力を入れる必要があるのではないかというふうに考えているんですが、その辺どういった形で具体的に推進できるのか、していこうとされているのかについてお伺いをいたします。

【答弁:杉本防災監】
防災リーダーがなかなか地域に根づいていないというご指摘でございます。
これにつきましては、確かにそういった面がかなり見受けられると思っております。これは一つには、フォローアップがきちんとできていなかったと考えておりまして、そのフォローアップをしっかりするということ、それからもう一つは、そもそもリーダー講座の研修の中に地域とのつながりを持つようなものが少なかったというようなところがございますので、本年度から実習的な形で地域に出向いていってレポートを書いていただくというような取り組みも進めさせていただく予定にしております。そうしたことで地域とのつながり、今後しっかりできるように頑張ってまいりたいと思っております。
それから、二つ目の県民全体への普及がなかなか難しいのではないかというご指摘でございます。
これも確かにそのとおりでございまして、先ほど申し上げましたようなさまざまな取り組み、特に我々が地域に積極的にアプローチをしていくといいますか、ひょうご防災特別推進員等の活動を通じてアプローチをしていく、あるいは訓練の呼びかけをする、こうしたことで防災に関心を持っていただく機会を増やしていくということ、こういうことを息長く続けていくことしかないのかなというふうに思っております。よろしくお願いしたいと思います。

2.ネットの利用に関する教育の強化について

【質問:こしだ】
次に子どもたちへのネット利用に関する教育の強化についてお伺いします。
今年7月、広島県呉市の山中に高等専修学校の16歳の女子生徒の遺体が遺棄され、強盗殺人と監禁の容疑で同世代の少年少女ら7人が逮捕される事件がありました。また、兵庫県においても、宝塚市の中学3年生の女子生徒が暴行を受け、別の市立中学の女子生徒2人が逮捕される事件も発生しています。これらはいずれも、無料通信アプリの「LINE」上での非難中傷の書き込みに腹を立てたことがきっかけとなり犯行につながっています。
「LINE」では電話番号やメールアドレスを知らない相手ともIDを使って電話やメールができることから、ネット上へのID掲載をきっかけに淫行やポルノ画像撮影などの犯罪被害に遭った18歳未満の子どもが今年上半期だけでも117人に達しており、昨年下半期の36人と比べ急増しています。

また昨年、他人のID、パスワードの利用による不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕された154人のうち64人が10代となっており、更に不正決済アプリを利用して紀伊國屋書店が運営する電子書籍サイトから3万6千冊2170万円相当の電子書籍が不正にダウンロードされる事件があり、多くの中高生がこの「電子万引き」に関与していました。マウスとキーボードだけの操作で現実感なく犯罪の一線を越えてしまっており、ネットで誰も見ていないから大丈夫、これぐらいは犯罪にならないといった意識から発生していると考えられます。
スマートフォンのカメラやGPS機能を活用し様々なコミュニケーションがネット上で行われていますが、警戒感なく個人情報や、わいせつ画像、反社会的な行動の画像等を公開したり、アプリ等を介して位置情報が晒されるなどにより、脅迫等の犯罪に結びつくケースがあります。仲間うちのコミュニケーションと思っていたものがコピー、蓄積されて将来に亘って残り続け就職や結婚等にも影響する可能性があることを自覚せずに利用しているケースが多く見られる状況があります。
これらの事象は、インターネットの利便性や匿名性を安易に捉え、ネットの世界でも現実社会と同等の規範性が求められることや、犯罪等に巻き込まれる負の側面を全く理解せずに利用している状況から発生していると考えられます。
更に、ネット依存の問題も深刻です。厚生労働省の調査で中高生の約51万人が睡眠や食事の時間を削ってネットにはまり、体調を崩したり、学校に行かなくなるケースがあるとの結果が発表されました。「LINE」の利用では、相手がメッセージを読むと「既読」の表示がされるため、すぐに返事をしないと怒られたり仲間外れにされるという不安に駆られ、深夜でもやり取りを続けざるを得なくなると言われています。また時間とお金をかければかけるほど他の参加者より優位にゲームを進められるオンラインゲームに熱中し、ネットへの依存が進むケースもあります。ネット依存は1か月程度で重症化することがあると言われており、早期発見し、適切な対処、治療を行うことが重要です。

このようにネットの利用に関して様々な問題が山積している中、学校教育の現場で適切な指導教育を行うことが強く求められている状況になっています。ネットを利用することは不可避の時代となっており、単に禁止するということではなく、負の側面と、利便性を正しく理解させ、適切に利用できる教育をすることが必須であります。そのためには、児童生徒に対する教育とともに、教師や保護者に対しても、常に進化するネットの問題に対する理解と、指導できる体制が求められていると考えますが、これらの点について、教育委員会としてどのような課題認識を持ち、どう対処していくのかについて当局のご所見をお伺いします。

【質問:高井教育長】
インターネット利用に関する教育の強化についてお答えいたします。
近年の情報通信技術の急速な発展や子供たちのインターネット利用形態の変化によりまして、ご質問にもありましたように、無料通信アプリケーションを介した誹謗中傷やいじめ、個人情報の流出、不正アクセスなどの犯罪、いわゆるネット依存などが新たな課題となっています。こうしたことに対しては、児童生徒、教員、保護者それぞれへの対応が必要でございます。
まず、児童生徒に対しましては、各教科、すなわち小学校では総合的な学習の時間、中学校では技術家庭の時間、高校では情報の時間を用いまして、情報社会での正しい判断や望ましい態度、情報社会での危険回避の方法、そしてセキュリティーの知識と技術、最後に健康との関わり、こういったことを指導しています。また、こうした教科以外でも、各種の事件が発生したようなそういった機会を捉えまして、全校集会あるいはホームルーム等におきまして、具体的な事例を示して児童生徒自らの問題としてその事件を捉えさせ、情報社会の危険性の指導を行っているところでございます。
次に、教員に対しましては、トラブルの未然防止や早期対応について、校内研修資料を提供いたしますとともに、県の教育事務所等で生徒指導上の課題を踏まえた情報モラルに関する指導方法等の研修を行い、そしてそれを受けて帰った教員が学校へ戻って校内研修の充実に努めています。併せまして、県警察とも連携しまして、最新の情報、指導資料をご提供いただいて、これを用いた研修会も開催をしています。
最後に保護者に対しましては、これも県警察と連携をして、教員、児童生徒も参加できますサイバー犯罪被害防止教室、これを今年度は8月までで122回開催をしております。緊急性の高い中学校や高校ではさらに取り組みを広げていくとともに、一方、PTA活動の中で、家庭でのルールづくり、あるいはフィルタリングの重要性などの啓発を進めてまいります。
今後ともこれらの取り組みを一層充実させまして、学校と家庭が緊密に連携し、情報モラル教育を推進してまいります。

3.空き家の有効活用について

【質問:こしだ】
次に、空き家の有効活用についてお伺いします。
日本の住宅ストックは2008年時点で5760万戸となっており、世帯数である約5000万を15%上回る飽和状態にあります。兵庫県内の空き家は33万6千戸あり空き家率は13%台です。空き家の中には放置され荒れ果てた物件があり、風雨や地震などで崩れ落ちる心配があるものについては、法律や条例の整備により対策が進められようとしています。
空き家であっても補修改装することで快適に暮らせる物件もたくさん存在しますが、活用されず空き家のまま放置されたままとなっています。地域において空き家は、火災や犯罪のきっかけとなる危惧等から大きな不安要素であり、住民が増えないことから活力を削ぐ要因にもなっています。
少子高齢化が進み、将来的なまちづくりのあり方としてコンパクトシティ化を進めることが求められる中において、今後も都市部を中心に大量に発生するとされている空き家を、中古住宅や賃貸物件として安価に流通させることは、住宅政策として重要な視点であると考えます。
国土交通省は中古住宅市場の活性化を目指して、今年6月に物件の状態、品質を客観的に把握するために行われる「インスペクション(検査)」のガイドラインを策定しました。この検査では中古住宅の売買時に状態を確認し、補修工事の必要性などをアドバイスするというもので、素人である買主が見つけられないような瑕疵を第三者に検査してもらうことで安心して中古物件の取得ができることにつながることが期待されています。
デフレ経済下において所得が伸び悩む中、住宅ローンで大型の借り入れに踏み切って新築の持ち家を取得するケースが増えたと言われています。住宅ローンを抱える若年世帯では住居費の割合が1989年の13%から2009年には19%にまで上昇しています。
また日本の賃貸居住の条件が低質で悪化している状況にあります。公的な賃貸住宅は約6%で、公的な家賃補助制度はほとんど存在せず、低家賃の民営借家と企業の社宅や家賃補助によって公的施策の不十分さを補ってきた現状がありましたが、低廉なアパートが老朽化の為取り壊され、企業福祉は経済不況下で縮小されてきたため低廉な賃貸物件が不足している状況であるとの指摘もあります。
活用可能な空き家を、中古住宅や低廉な賃貸物件として流通させるためには、売却や賃貸に結び付くために必要な後押しを県としても検討して実施すべきだと考えます。我が国の住宅ストックが飽和状態にある中、時代にあった住宅政策が求められると考えますが、空き家への対策、特に中古住宅としての流通促進について当局のご所見をお伺いします。

【答弁:井戸知事】
続きまして、私からは空き家の有効活用についてお答えをいたします。
本県における空き家は、平成20年度時点で約33万6,000戸であります。13%程度になります。それまでの5年間で約2万3,000戸増加をしました。今後世帯数の減少に伴って、さらなる空き家の増加が予想されますので、空き家への対策は県としても大きな課題だと認識しています。
空き家対策を進めていくためには、まずは空き家の発生そのものを防止することが大切ですので、中古住宅の流通促進対策を行う必要があります。第2は、立地条件などから流通が難しい空き家につきましては、用途変更も含めた活用ができないかどうかを検討する必要があります。第3に、周辺住環境等の悪化を防ぐために、空き家を適正管理してもらったり、あるいは除却をしてもらう、このようなことも必要だと考えます。そのような意味で、総合的な取り組みが不可欠です。
昨年度から県と市町で構成する空き家対策検討会を開催し、検討しておりますし、住宅審議会で議論を進めております。今年度中にはそれらを取りまとめた空き家対策ガイドラインを策定していきたい、このように考えています。
このうち中古住宅の流通でありますけれども、我が国の全住宅流通量の13.5%が中古住宅でありますが、これは欧米諸国の6分の1程度にとどまっています。このように小さくとどまっている理由は、品質や性能面への不安を払拭しなければなりません。売買に際して建築士等が第三者の立場で建物の劣化状況や耐震性を診断する仕組み、ご指摘のインスペクションの普及が必要と考えます。国交省がガイドラインを設定されておられます。このため現在阪神南地域で不動産業者、建築士等から構成されます中古住宅流動化推進協議会がモデル的にインスペクションの仕組みを活用しております。県もこれに積極的に参画するとともに、この仕組みの運営状況を踏まえて全県への拡大を検討してまいります。
また、今年度から空き家の利活用を促進するため、水回りなどの改修を支援する「さとの空き家活用支援事業」を実施しています。併せて、所有者と利用希望者をマッチングさせるため、県内15市町で実施している「空き家バンク制度」を県内市町にも広く普及させてまいりたいと考えます。
今後とも市町や関係業界と連携を図りながら、空き家の流通活用、維持管理などに関する県民相談の体制を充実して空き家対策を推進してまいりますので、よろしくご指導をお願い申し上げます。

4.UR借上県営住宅の継続入居者のコミュニティ維持の課題について

【質問:こしだ】
次にUR県営借上県営住宅についてお伺いします。
2016年12月に最初の返還期限が迫っているUR借上県営住宅について県は、住み替えが困難な高齢者等がいる世帯を対象に継続入居を認めることとし、80歳以上を基本とした年齢要件や一定の要介護度・障がいの要件などに合致する世帯は、返還期限後も継続して入居できることになり、一定の安心感につながる基準となっています。
しかし、継続入居判定基準に当てはまらず、転居を余儀なくされる方もはっきりしたことから、今後転居の動きが加速していくことになります。特に1棟借りをしている借り上げ住宅については、すでに新たな入居者募集は停止しており、転居する居住者が増えていく中で空き部屋が増えている状況から、これまで様々な行事を開いたり、若い方が高齢の方に声を掛け、買い物などを手伝ったりとご近所同士で支えあっていたコミュニティの維持が困難になるとの危惧を抱いています。URへの返還期限前には高齢者等ばかりの居住状況になることが予想され、非常に不安を感じていらっしゃる方が多くおられます。最終的に継続入居判定基準を満たした方のみが残った状態で、返還期限を迎え、そこからURが募集する新しい居住者が一気に入居することになると、新旧の住民の間でうまくコミュニティが機能するかどうかの危惧があります。
県としては、高齢の入居世帯については、指定管理者による月2回以上の巡回によって、サポートを行う予定であるとのことですが、それだけでは不十分であり、日常的なご近所同士の支えあいのコミュニティを維持し、継続入居者が引き続きこれまで通り安心して生活できるように手当てしていく必要があるのではないでしょうか?
そのためには、URとの交渉が必要でありますが、空き部屋となっているところについては、返還期限前に順次URへの返還を行い、URには新しい居住者の募集・受け入れを進めていただき、段階的にコミュニティ機能を引き継いでいくような配慮が必要であると考えます。
ある継続入居判定基準に当てはまらない方から、「これまで一緒に支えあってきた高齢者の方が心配で見捨てていくことができない。だから、無理をしてURから今の部屋を借りて住み続けていきたい。」との思いを伺ったことがあります。
UR借上県営住宅の継続入居の課題解決は、基準を決めて一件落着ではありません。丁寧に継続入居する方の不安を取り除き、コミュニティを維持、発展させることができるように十分な配慮を行う必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

【答弁:大町まちづくり部長】
私からは、UR借上県営住宅のコミュニティ維持の課題についてお答えいたします。
UR借上県営住宅につきましては、契約期限までに都市再生機構に返還することを基本として、入居者には円滑に住み替えていただくことを原則としていますが、高齢や障害などで住み替えが困難な方がおられる世帯については、一定基準に基づき継続入居を認める方針を本年3月に取りまとめたところです。
現在、団地ごとの説明会を8月から順次開催しております。この方針を入居者に正しく伝達するとともに、入居者からの意見等の聴取や実情把握についても努めております。11月には継続入居の判定を行う委員会を立ち上げ、入居者からの意見等を踏まえ、地域のコミュニティなどの社会関係性の判定基準づくりに取り組んでいきます。
また、住み替え支援策として行っているグループ単位での募集の利用等を促進し、住み替え先でも現在のコミュニティが維持できるよう努めてまいります。
議員ご指摘のとおり、棟借りの借上県営住宅において、段階的にコミュニティ機能を引き継いでいくためには、今後増加していく空き住戸への新たな入居が必要と考えております。これらの空き住戸については、契約期限前にURが新たな入居者を募集し、入居が決定した時点で順次URに返還する枠組みづくりなどを関係市と連携してURと交渉を行ってまいります。
さらに、今後の団地ごとの継続入居者の状況に応じ、指定管理者による巡回の回数、内容の充実を図ります。加えて地元市の福祉部局との連携を強め、安否確認、生活相談などの見守り強化により高齢者の不安を取り除くとともに、ふれあい喫茶や音楽会などの住民活動への支援により、住民相互で見守ることができる地域のコミュニティづくりにも取り組んでまいりたいと考えております。

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